Anthropicが2026年9月23日、Claudeの中から外部のソフトやコンサルティングを探して買える「Claude Marketplace」を開設した。2,000を超えるコネクタ・プラグインに加え、Claudeを使って作られたソフトウェア6社、導入を手伝うコンサルティング会社3社が、同じ売り場に並んだ。
その売り場の棚には、コード編集ツールCursorの名前もある。Cursorは特定のAIに縛られず、複数のモデルを行き来できるツールとして知られてきた。売る側のはずのCursorが、なぜ買われる側の棚にも並んだのか。9月25日には、この売り場に自分のツールを並べたい開発者向けの提出窓口も動き出している。
3つの棚に何が並んだか
Claude Marketplaceは、性質の異なる3種類の売り場を1つの画面にまとめたものだ。1つ目はコネクタ・プラグインで、Atlassian・Google・Microsoft・Notion・Salesforceなどを含め2,000を超える数が公開初日から利用できる。2つ目はClaudeを使って作られたソフトウェアで、セキュリティのCrowdStrike、コード編集のCursor、法務のHarveyとLegora、開発支援のLovable、データ基盤のSnowflakeの6社が名を連ねる。3つ目は導入を手伝うコンサルティング会社で、Accenture・Boston Consulting Group(BCG)・Deloitteの3社が並ぶ。
公開初日から2,000を超えるコネクタ・プラグインを選べる。Atlassian・Google・Microsoft・Notion・Salesforceなどが含まれる。
この3層構造そのものは目新しくない。ChatGPTにも外部サービスを呼び出す「App Directory」があり、GitHub Copilotにも拡張機能を集めた「GitHub Marketplace」がある。Claude Marketplaceが変えたのは、この3層を1つの画面に統合し、しかも支払いの経路まで用意した点だ。
売り手のはずのCursorが、なぜ買われる側にも並ぶのか
Cursorは、ClaudeにもGeminiにもGPT系モデルにもGrokにも切り替えられる、特定のAIに縛られないコード編集ツールとして知られている。1つの会話の途中でモデルを変えられる仕組みは、Cursor自身が売りにしてきた特徴だ。前回の記事で触れた「Projects」機能の競合でも、CursorはAnthropicと同じ土俵で正面から競っていた。
その競合相手の売り場に、Cursorが「Claude搭載ソフトウェア」として並ぶ。矛盾しているように見えるが、Anthropicが並べているのは「Cursorという会社の製品」であって、「Claudeしか使えないツール」という意味ではない。多くの利用者がCursorの中でClaudeのモデルを選んで使っている以上、Claudeの利用者から見れば「Claudeと組み合わせて使う先」として紹介する理由は十分にある。
CursorはClaudeのAPIを大量に使う大口の利用者でもある。Anthropicにとっては、競う相手であると同時に売上の一部を支える相手でもある。
Claude搭載ソフトウェアの棚に並ぶ条件は、Claudeで動く機能を持っていることで、他のAIを併用しないことではない。同じ棚にあるSnowflakeやLovableも、他社のAIを併用できる製品だ。
Cursorの中でClaudeのモデルが選ばれる回数が増えれば、Anthropicの取り分も増える。競合の看板を掲げていても、内側の売上構造では味方になり得る。
「契約済みの予算」で買えるという新しい売り方
Claude Marketplaceのもう1つの特徴は、支払いの経路にある。企業がAnthropicとあらかじめ結んでいる利用枠(契約済みの予算)の一部を、CrowdStrike・Cursor・Harvey・Legora・Lovable・Snowflakeといった提携ソフトウェアの購入にそのまま充ててよい、という仕組みが同時に整った。
これは目立たない変更に見えて、企業の購買部門にとっては手続きの重みが変わる話だ。新しいソフトを導入するとき、通常は新規の予算申請という手間が発生する。すでに承認済みの枠から差し引く形にできれば、その申請自体が要らなくなる。
裏を返せば、Anthropicは自社の契約を軸にした購買の入口を握ったことになる。CrowdStrikeやSnowflakeのような、単体でも高額な契約を結ぶ企業向けソフトウェアが、Claudeの契約に相乗りする形で導入されやすくなる。
ChatGPTのApp Directory、Copilotの拡張機能とどう違うか
似た仕組みは他社にもすでにある。ChatGPTには会話の中からアプリを呼び出せる「Apps SDK」と「App Directory」があり、GitHub Copilotには拡張機能を集めた「GitHub Marketplace」がある。3つを並べると、力を入れている場所の違いが見えてくる。
| 比較項目 | Claude Marketplace | ChatGPTのApp Directory | GitHub Marketplace(Copilot) |
|---|---|---|---|
| 基盤の技術 | MCP(Anthropicが原案) | Apps SDK(MCPを採用) | GitHub独自の拡張機能仕様 |
| 契約済み予算の流用 | 対応(企業向け) | 公表なし | 公表なし |
| 利用料金の傾向 | 連携先ごとの個別契約が中心 | アプリ側の料金設定に依存 | 多くの拡張機能が無料 |
| 開発者の参加条件 | Claudeの有料プラン(9/25開設の提出窓口) | 審査を経た第三者開発者 | Copilotライセンスがあれば無料で構築可 |
技術面でひとつ興味深い符合がある。ChatGPTのApps SDKは、Anthropicが考案した接続規格MCP(Model Context Protocol)を採用している。競合であるOpenAIのアプリ基盤が、Anthropic発の規格の上で動いているという構図は、Claude Marketplaceの土台そのものが他社にも広がっていることを意味する。
これは誰に関係する話か
3種類の読者で、関係の深さがかなり違う。
契約済みの予算をCrowdStrikeやSnowflakeの導入に充てられるかどうかは、次の契約更新時に確認すべき項目になる。対象範囲はAnthropicの営業担当に直接確認するのが確実だ。
9月25日に開いた提出窓口を使えば、Claudeの有料プランを持っていれば自分のMCPコネクタやプラグインを審査に出せる。公開までの手続きが明確になった。
今すぐ何かを変える必要はない。ただ、普段使っているツールがいつのまにか「Claude搭載」の棚に並ぶ可能性はある。見かけたら、それが他のAIとの併用を妨げるものではないか確かめてから導入するとよい。
編集部の見立て
今回もっとも興味深いのは、Cursorという競合が売り場の商品として並んだ事実だと考えます。AIを選ぶ側からすると、企業どうしの競合関係と、実際の製品連携は別の軸で動くのだと分かる例です。表向きの競争と、裏側の顧客関係が同時に成立する場面は、これからも増えていくと見ています。
契約済みの予算を流用できる仕組みも見過ごせません。これは単なる便利機能ではなく、企業がAIベンダーを選ぶ基準に「その先の購買までまとめて任せられるか」という項目を追加する動きです。導入するソフトの選択肢そのものより、予算の流れをどこに寄せるかという判断が、これから重みを増していくはずです。
ChatGPTのアプリ基盤がAnthropic発のMCPで動いている点も、読者が覚えておく価値があります。どのAIを使うかという選択と、どの規格の上でツールがつながるかという選択は、別の階層にあります。後者の階層で規格を握った会社は、前者の競争で仮に負けても影響力を残せます。
まとめ
2026年9月23日、AnthropicがClaudeの中から外部ツールを探して買えるClaude Marketplaceを開設しました。コネクタ・プラグイン2,000超、Claude搭載ソフトウェア6社(CrowdStrike・Cursor・Harvey・Legora・Lovable・Snowflake)、導入支援のコンサルティング3社(Accenture・BCG・Deloitte)の3層構造です。
企業は契約済みのAnthropic利用枠の一部を、これらのソフトウェア購入に充ててよいという購買の仕組みも同時に整いました。2日後の9月25日には、開発者が自分のツールを提出できる審査窓口も開設されています。
売る側のはずのCursorが買われる側の棚にも並んだのは、Cursorが特定のAIに縛られないツールで、Claudeの大口利用者でもあるからです。競合であることと顧客であることは、この業界では両立します。
次の分岐点は9月29日、サンフランシスコで開くOpenAIのDevDayだ。ChatGPTのApps SDKに何を積んでくるかが、Claude Marketplaceへの直接の回答になる。