毎回同じような経費精算やメール返信のために、Claude にいちいち手順を言葉で説明するのは面倒だ──そう感じたことがある人に向けた機能が、2026年7月21日に静かに追加された。名前は「Record a Skill(スキルを録画する)」。画面を録画しながら作業をこなし、口頭で理由を語るだけで、Anthropicの Claude Cowork がその一部始終を再利用可能な「Skill」に変換してくれる。
プロンプトエンジニアリングという言葉が一般語彙になって久しいが、その"書く"という工程そのものを省こうという試みだ。何がどう変わるのか、そして ChatGPT や Gemini の似た仕組みと比べて何が違うのかを整理する。
何が発表されたのか
まず経緯を時系列で押さえておく。発表からわずか数日で複数の海外メディアが一斉に取り上げ、便利さと同時に懸念点も指摘され始めている段階だ。
Anthropic、「Record a Skill」をClaude Coworkに追加Claudeデスクトップアプリの「+」メニューから起動できる新機能として公開。対象はPro・Max・Teamの各プラン契約者で、無料プランでは利用できない。
海外メディアが一斉に報道Search Engine Journal、Android Authority、CyberSecurityNewsなどが相次いで詳細を報じた。「プロンプトを書かずに教える」という体験の新しさとともに、録画に伴うプライバシー面の懸念を指摘する記事も目立った。
保存・プライバシーに関する専用ドキュメントは未公開記事執筆時点(2026年7月21日)で、Anthropicは録画データの保存期間や取り扱いに関する専用の説明を公開していないと複数メディアが指摘している(※観測)。
録るだけでスキルになる仕組み
そもそも「Skill」とは、Claudeが必要なときに読み込む、タスク特化の手順書のようなものだ。これまでは人間がその手順書(SKILL.mdというファイル形式)を文章で書き起こす必要があった。この"書き起こし"こそが、ベテラン担当者の判断基準や例外処理まで含めて言語化する作業であり、最大の障壁だったとされる。
Record a Skillの流れはシンプルだ。録画を開始し、画面上で実際に作業をこなしながら、なぜそう操作するのかを声に出して説明する。録画を止めると、Claude側のシステムが画面の動き・マウス操作・キー入力・音声解説をまとめて解析し、構造化されたSkill定義を自動生成する。
SKILL.mdという規格に沿っており、Claude Code・Claude Agent SDKなど、複数のAnthropic製ツールで共通して読み込める設計になっています。Cowork専用の機能にとどまらず、開発者向けの環境でも同じSkillを使い回せる点が特徴です。
なお、生成されるのはあくまで「ライブラリに追加されるSkillファイル」であり、録画映像そのものがモデルの学習データとして扱われるわけではない、と説明されている。
なぜ「書かなくていい」が効くのか
この機能が注目される理由は、目新しさだけではない。実務での自動化を阻んでいた具体的な壁を、いくつも同時に取り除いている点にある。
手順書やSkill定義を言葉で書き起こす代わりに、普段どおり作業をこなすだけでよい。文章化が苦手な現場担当者でも、口頭説明さえできれば自動化の起点になれる。
「この場合だけ承認ルートを変える」といった暗黙知は、文章では抜け落ちやすい。作業しながら口頭で理由を語る形式なら、そうした例外条件も録画の中に残る。
利用できるのはPro・Max・Teamの契約者に限られ、無料プランのユーザーは今のところ対象外。デスクトップアプリの「+」メニューからのみ起動できる。
録画には画面上に映るあらゆる情報が写り込む。取り扱いに関する詳細な公式ドキュメントは、記事執筆時点でまだ整備されていないと報じられている。
ChatGPT・Geminiの類似機能と何が違うのか
「AIに独自の振る舞いを教える」仕組み自体は、Claudeだけのものではない。ChatGPTの「Custom GPTs」やGeminiの「Gems」も同じ土俵の機能だ。作り方と持ち出せる範囲で見比べると、狙いの違いが見えてくる。
文章と設定画面で作り込むタイプ。GPTストアでの公開・共有インフラが強みで、すでに300万件を超えるカスタムGPTが公開されている。ただしOpenAIのエコシステム外には持ち出せない。
指示文の上限が4,000字程度と控えめで、複雑な業務手順の再現には向かない。Google Workspaceとの連携のしやすさが強み。
画面録画から生成する点が最大の違い。SKILL.md形式でClaude Code・Agent SDKなど複数ツールに持ち出せる一方、GPTストアのような公開・共有の場は今のところ用意されていない。
整理すると、共有・拡散を重視するならChatGPT、Google系業務の作業ならGemini、そして手順の言語化そのものを省いて素早く自分専用の自動化を作りたいならClaude、という住み分けになる。どれか一つが万能というより、目的で選ぶべき機能だ。
使う前に知っておきたい注意点
便利さの裏にあるのが、画面録画という手段そのものが持つリスクだ。経費精算やメール対応といった日常業務を録画すれば、口座番号や社内ツールの画面、同僚の名前といった、本来は録画に含めるつもりのなかった情報まで写り込みかねない。
裏を返せば、この懸念は機能そのものの欠陥というより「新しい機能にありがちな、説明がまだ追いついていない段階」の話でもある。過度に恐れる必要はないが、業務フローに組み込む前に一呼吸置く価値はある。
結局、あなたは何をすべきか
ニュースとしてのインパクトの割に、今すぐ全員が動くべき話ではない。立場によって取るべき行動は分かれる。
経費精算・定型レポート作成・ファイル整理のように「毎回同じ手順」を踏む作業があるなら、一度試す価値がある。ただし最初の録画は、機微情報を含まない練習用のタスクで試すのが安全だ。
今回の機能は対象外なので、慌てて乗り換える必要はない。ChatGPTのCustom GPTsやGeminiのGemsで足りている運用なら、それぞれの強み(共有性・Workspace連携)を活かし続ければよい。
いずれにせよ、一つのツールに縛られる理由はない。反復業務の自動化という同じ目的でも、共有したいのか、社内ツールと連携したいのか、手早く自分専用に作りたいのかで最適解は変わる。用途ごとに使い分ける視点を持ちたい。より詳しい機能の違いはチャットAIの一覧やChatGPTとClaudeの比較も参考にしてほしい。
編集部の見立て
Record a Skillが面白いのは、AIの賢さを競う話ではなく、「教える側の負担」を減らす話である点です。モデルの性能競争が一段落つきつつあるいま、各社の勝負どころが「どれだけ賢いか」から「どれだけ導入しやすいか」へ移りつつある、その流れを象徴する一手だと見ています。
一方で、保存・プライバシーの説明が追いついていない状態でのリリースは、拙速との批判を招きかねません。画面録画という手段は、テキストのプロンプトよりも遥かに多くの情報を無自覚に含み得るからです。ここは今後の公式ドキュメント整備を注視すべきポイントでしょう。
それでも方向性としては理にかなっています。プロンプトを書ける人だけがAIの恩恵を受ける時代から、「やって見せられる人」なら誰でも自動化に手が届く時代へ。ハードルの下げ方として、十分に理にかなった一歩だと思います。
まとめ
2026年7月21日、AnthropicはClaude Coworkに「Record a Skill」を追加しました。画面を録画しながら作業をこなし、口頭で説明するだけで、Claudeがその内容を再利用可能なSkillに変換してくれる機能です。対象はPro・Max・Teamプランで、無料プランは対象外です。
反復業務を抱えているなら、試す価値はあります。ただし保存・プライバシーに関する公式な説明がまだ整っていない段階のため、最初はパスワードや個人情報を含まない作業で試すのが賢明です。
ChatGPTのCustom GPTsは共有・拡散に強く、GeminiのGemsはGoogle Workspaceとの相性がよく、ClaudeのSkillsは言語化の手間を省いて複数ツールに持ち出せる。どれが優れているかではなく、自分の目的に合う一本をそのつど選び直せる目を持っておくことが、AIを使いこなすうえでの近道です。
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