Google が10月6日、Mac向けの会議メモアプリ「Google AI Edge Foresight」を公開した。会議の音声を聞き取り、走り書きのメモを詳しいノートに膨らませるという、いわゆるAIノートテイカーだ。ただし中身の処理は、インターネットではなく手元のMacの中で完結する。Google自身が「完全にオフラインで動く」「クラウドの購読料はかからない」と説明している。
会議の録音や文字起こしをAIに任せたい人にとって、いちばん引っかかるのは「社外に出せない話をクラウドに送ってよいのか」という点だろう。Foresightはその引っかかりを、端末内で処理するという形で外そうとする試みだ。一方で、公式の発表は実験的なアプリと位置づけており、価格や動作条件はまだ読み取れない。
Google AI Edge Foresightとは何か
Foresightは、Googleが端末内で動かすAI(エッジAI)の開発者向けブランド「Google AI Edge」から出た、Mac用のアプリだ。Googleは実験的なアプリ(experimental app)と呼んでいる。TechCrunchはこれを、会議メモアプリとして知られる Granola の競合として紹介した。
使い方は次のとおり。会議中に短い箇条書きのメモを打つと、アプリが会議の音声を並行して聞き取り、そのやりとりをもとに走り書きを詳しいノートに広げる。片側にメモ、もう片側にAIが作ったノートを並べて見られる画面で、会議の文字起こしを開いたり、アシスタントに質問したりもできる。
音声の取り込み方が、他の多くのツールと違う。Zoomなどの会議に「参加者」として入るのではなく、Macのシステム音声とマイクを直接拾う。そのため、会議ツールの種類を問わず使える(Googleの説明)。もうひとつの特徴が個人の資料の持ち込みで、TechCrunchによれば、PDF・Googleドキュメント・Office形式のファイル・テキスト・Markdown・Webのブックマークを読み込ませると、会議で質問が出たときに、その資料から答えを探してくれる。
中身は2つの小さなモデル──EmbeddingGemma 2とは
Foresightを支えているのは、Googleが公開しているGemmaシリーズの2つのモデルだ。Gemmaは、学習済みの中身(重み)が公開され、手元のパソコンやスマートフォンで動かせることを前提にしたGoogleのモデル群を指す。
ひとつはGemma 4で、TechCrunchによればチャットで質問に答えるアシスタント役を担う。もうひとつが、同じ10月6日にGoogleが公開したEmbeddingGemma 2である。埋め込み(エンベディング)モデルとは、文章・画像・音声を「意味の近さで比べられる数値の並び」に変換するモデルのことだ。会議中に出た質問と、手持ちのPDFの一節を見比べて「この部分が答えに近い」と見つける、検索の下ごしらえを受け持つ。
EmbeddingGemma 2のパラメータ数(モデルの大きさを表す数)は合計7億4,000万。内訳は、テキストの中核が2億7,000万、画像用が1億7,000万、音声用が3億の3つで、画像や音声が要らなければテキストの部分だけを使える。Googleが示した数値では、スマートフォンのPixel 11 Proで量子化(数値を粗くして軽くする処理)をかけた場合、テキストだけで約191MB、全部入りで約567MBのメモリで動く。
ChatGPTやClaude、Geminiの上位モデルは、データセンターで動かす前提の大きさをもつ。それと比べると、7億4,000万という数は桁がいくつも小さい。小さいから端末内で動くのであり、そのぶん「大きなクラウドモデルと同じ質で要約できるのか」は、別に確かめるべき問いになる。
クラウドに渡す使い方との違い
会議メモにAIを使う方法は、大きく2つある。ひとつは、文字起こしをChatGPTやClaude、Geminiのようなクラウド型のAIに貼って要約させる使い方。もうひとつが、Foresightのように手元で処理する使い方だ。違いを並べると、次のようになる。
| 比べる点 | Foresight(端末内で処理) | クラウド型AIに渡す |
|---|---|---|
| 処理する場所 | 手元のMacの中(Googleの説明) | 提供元のサーバー |
| ネット接続 | なくても動く(Googleの説明) | 必要 |
| 購読料 | Googleは「クラウドの購読料なし」と説明。購入価格は確認できていない | サービスごとに月額・従量課金 |
| 会議への参加方法 | システム音声とマイクを直接拾う | 文字起こしを貼る、または別ツールで録る |
| 要約・推論の質 | 小型モデル。独立した比較は未確認 | 大型モデルを選べる |
| 対応環境 | Mac用の実験的アプリ | ブラウザやアプリがあれば環境を問わない |
この表で目を引くのは、上の3行(処理する場所・ネット接続・購読料)がすべて「どこで処理されるか」に関わっていることだ。Foresightが売っているのは、メモの賢さというより、録音データがMacの外に出ないという構造にある。
まだ分からないこと
公式の説明から読み取れない点が、実際の選択に直結するところに集まっている。
必要なメモリ量やMacの世代、macOSの版数は、確認できた発表の範囲では読み取れない。TechCrunchは「Apple Silicon向けに最適化」と書いている。
要約の正確さ、聞き取りの精度、日本語での出来は、独立した比較が見当たらない。しかも音声を文字に起こすモデルが何かは、確認できた発表では明示されていない。
アプリのソースコードを公開するかどうかは、確認できた発表では示されていない。Geminiアプリの機能として広げるのかも、公式には語られていない(TechCrunchはその可能性を推測している※観測)。
「端末内で処理する」という説明も、Google自身の言葉であって、第三者が通信を確かめた結果ではない。仕組みとして外へ送らない設計であることと、実際に何も送っていないことは、別の話だ。
あなたの会議はどちらで処理するか
この発表を受けて、読者が取れる行動は会議の中身で分かれる。
契約の交渉、人事、医療や法務の相談のように、録音を外部のサーバーに置くこと自体が問題になる会議。ここは端末内処理の利点がそのまま当たる。ただし実験的アプリなので、本番の会議より先に、社内の定例のような重要度の低い会議で挙動を見たい。
決定事項や担当者の抜けを絶対に出したくない用途では、大型のクラウドモデルを使い慣れているなら、乗り換える根拠はまだない。小型モデルでどこまで追いつくかは、実際の会議で測るしかない。
いま案内されているのはMac用の実験的アプリで、WindowsやiPhone向けの提供は確認できていない。選択肢になるのは、Macで会議に出る人に限られる。
編集部の見立て
今回の発表でいちばん注目したのは、機能の目新しさではなく、Googleが「処理の場所」そのものを売り物にしてきたことです。会議メモのAIは、これまで「どのモデルが賢いか」で比べられてきました。Foresightはその軸に、「どこで動くか」という別の軸を持ち込みました。
もうひとつ見ておきたいのが、これがGeminiのアプリではなく、Gemmaを使ったMac用の実験アプリとして出てきた点です。TechCrunchも、クラウド型の会議メモ機能をGeminiで出す道が残っていると推測しています。端末内で動く試作を先に出し、反応を見てから本流に取り込む、という順番なのかもしれません。ただしこれは見立てであって、Googleが語った計画ではありません。
読者にとっての実益は、「録音を外に出したくない」という理由でAIメモを諦めていた人に、選べる道がひとつ増えたことです。一方で、小さなモデルが大きなクラウドモデルと並ぶ質を出せるかは、まだ誰も示していません。端末内で動く安心と、要約の精度は、しばらくは交換になる可能性があります。
まとめ
Googleは2026年10月6日、Mac向けの会議メモアプリ「Google AI Edge Foresight」を実験的アプリとして公開しました。会議の音声をシステム音声とマイクから直接拾い、走り書きのメモを詳しいノートに広げ、手持ちの資料から質問への答えを探します。
処理は端末内で完結し、オフラインでも動く、とGoogleは説明しています。中身はGemma 4と、同日公開の7億4,000万パラメータのEmbeddingGemma 2です。購読料はかからないとされますが、購入価格や動作条件は、確認できた発表からは読み取れません。
端末内処理の利点が当たるのは、録音を社外に置けない会議です。要約の質は第三者の比較がなく、現時点では未確認です。
次に確かめたいのは、Googleが案内しているダウンロードページに、必要なMacの条件と提供範囲が載るかどうかだ。実験的アプリのまま止まるのか、Geminiの機能として育つのかは、その先で決まる。