AIの料金プランが変わったとき、それが正しかったのかどうかは、たいてい後から数字で分かる。2026年7月29日(米国時間)に発表されたMicrosoftの2026年度第4四半期決算は、その答え合わせだった。
GitHub Copilot のユーザー数は5,000万人に達した。Microsoft 365 Copilotの有償シートは3,000万席を超え、1四半期で1,000万席増えている。そしてクラウド基盤のAzureは、年間売上が初めて1,000億ドルを超えた。
もう一つ、開発者にとって重い数字がある。6月に全面移行して反発を呼んだ従量課金への切り替えのあと、Copilotの売上は前四半期比で60%超の加速を見せた。値付けを嫌ったユーザーの声は本物だったが、会社の売上は伸びていた。この非対称が、9月に控える次の変更をどう左右するのかを見ていきます。
決算で開示された数字
まず全体像を押さえます。Microsoftの2026年度第4四半期(2026年4〜6月)は、売上・利益とも市場予想を上回りました。株価は決算発表後の時間外取引で8%上昇しています。
年度全体では売上3,318億ドル(18%増)、営業利益1,552億ドル(21%増)。クラウド事業をまとめた「Microsoft Cloud」は年間2,140億ドルで27%増です。Azureの年間1,000億ドル超えは、前年度の750億ドルから41%伸びた結果で、クラウド基盤としてはAmazon Web Servicesに次ぐ規模、Google Cloudを上回る位置になります。
「5,000万ユーザー」と「3,000万席」は別の物差し
今回の決算説明会で、サティア・ナデラCEOはCopilot関連の数字を2つ挙げました。GitHub Copilotが5,000万ユーザー、Microsoft 365 Copilotが3,000万有償シート超です。GitHub全体のユーザー数は2億2,500万人と説明されました。
この2つは並べて語られがちですが、数え方が違います。前者は「ユーザー」、後者は「有償シート」。GitHub Copilotには無料プランがあり、ユーザー数にはそれを含みます。つまり5,000万人がお金を払っているという意味ではありません。一方で有償シートは、企業が実際に人数分の料金を払っている席の数です。
同じ「Copilot」という名前でも、開示される指標は「ユーザー数」と「有償シート数」で分かれている。前者は普及の広さを、後者は売上に直結する契約の厚みを表す。読むときに混ぜてはいけない。
有償シートのほうは推移が分かるので、そちらを見ると勢いがはっきりします。2026年1月の決算発表時点で1,500万席、4月で2,000万席、そして今回7月で3,000万席超。半年で倍増し、直近の1四半期だけで1,000万席増えました。
もう一つ、規模の広がりを示す数字として、5万席以上を導入している顧客の数が前年から7倍以上に増えたことも説明されています。試験導入の段階を抜けて、全社展開に移った企業が増えているという説明です。
反発を招いた従量課金は、売上では機能していた
ここが今回いちばん読み応えのある部分です。GitHub Copilotは2026年6月1日、全プランを従量課金(GitHub AI Credits)へ移行しました。月額は据え置きのまま、月額と同額分のクレジットが付き、それを超えた分は追加購入になる仕組みです。開発者からは「払う額は同じで、できることは減る」という反発が出ました。この経緯はコード支援AIの値付け戦争を扱った記事で詳しく整理しています。
その約2か月後の決算で、ナデラCEOはCopilotの売上が前四半期比で60%超の加速を示したと説明しました。GitHub Copilotについても、従量課金の導入後にビジネス/エンタープライズの席数が伸び続け、消費分の売上がまとまった規模になったと述べています。
SNSやフォーラムでの不満は実在しました。ただ、それは「解約」という形にはあまりならなかったようです。席数が伸びながら消費分が積み上がった、という説明はその両立を示しています。
従量課金で売上が伸びるのは、付与クレジットを使い切って追加購入する利用者がいるからです。エージェント機能を日常的に回す開発者ほど、この層に入りやすくなります。
値付けを戻す判断は、通常「売上が落ちた」ときに起きます。今回の数字はその逆でした。従量課金を緩める方向の変更は、期待しにくくなったと読めます。
1,159億ドルを投じ、手元キャッシュは23%減った
売上が伸びた裏で、支出も過去最大になりました。2026年度の設備投資(ファイナンスリースを含む)は1,159億ドル。前年度の645億ドルから約1.8倍です。
第4四半期だけで見ると、設備投資とファイナンスリースの合計は410億ドルで前年同期比69%増。うち有形固定資産への現金支出が358億ドル、ファイナンスリースが56億ドルです。同社の説明によれば、この投資の約3分の2はCPUやGPUといった寿命の短い資産に向けられています。データセンターの建物は長く使えますが、半導体はそうはいきません。
この規模の支出は、キャッシュの流れに現れました。四半期のフリーキャッシュフローは196億ドルで、前年同期から23%減。営業利益が18%伸びる一方でキャッシュが減ったのは、稼いだ額を上回るペースで設備に注ぎ込んでいるからです。それでも市場予想(134億ドル前後)は上回りました。
設備投資はさらに増える。判断の根拠は、自社サービス全体にわたる需要の兆候である──決算説明会でのエイミー・フッドCFOの説明は、投資を絞る気配のないものだった。2027年度も現金収支は黒字を保てるとしている。
会社が示した2027年度の設備投資見通しは約1,750億ドル。2026年度実績(1,159億ドル)のさらに約1.5倍にあたります。受注残(契約済みで未計上の売上)は6,780億ドルまで積み上がっており、需要側の裏づけとして示されました。
Copilotを使う人・選ぶ人が確認すべきこと
ここまでは会社の数字です。では、月10ドルや19ドルを払っている側には何が跳ね返るのか。今回の決算から具体的に導けるのは、次の3点です。
従量課金が売上を押し上げたということは、付与枠を超えている利用者が実際にいるということです。自分がその側にいるかどうかは、請求明細の消費クレジットを見れば分かります。9月1日の優遇枠縮小の前に、いまの消費ペースを把握しておく価値があります。
5,000万という数字は普及の広さを示しますが、その多くが無料枠である可能性を含みます。導入を検討する立場なら、比べるべきは有償で使い続けている規模と、自分の用途での実測です。数の大きさは品質の証明ではありません。
設備投資1,159億ドル、2027年度は約1,750億ドルの見通し。この回収は、価格か従量課金か同梱値上げのどこかで進みます。同梱による見えない値上げと同じ構図が、コード支援AIでも起こりうると考えておくのが妥当です。
編集部の見立て
今回の決算でいちばん示唆的だったのは、Azureの1,000億ドル超えではないと考えます。6月に開発者の反発を招いた従量課金が、売上の面では明確な成果を出していたことです。不満の声の大きさと、収益への影響は別物でした。この事実は、値付けに関する読者の期待値を一段下げる材料になります。
企業が価格政策を戻すのは、たいてい数字が悪化したときです。今回は逆でした。ですから9月1日の優遇クレジット枠の縮小についても、直前に緩和されるという前提で計画を立てるのは避けたほうが安全だと考えます。準備しておいて何も起きなければ、それは損にはなりません。
設備投資の中身にも触れておきたい点があります。投資額の約3分の2が寿命の短い半導体に向いているという説明は、この支出が一度きりの建設費ではなく、数年ごとに繰り返される性質のものだと示しています。1,159億ドルから約1,750億ドルへという増え方は、その繰り返しが加速する局面に入ったことを意味します。回収の圧力は、どこかで利用者側の料金表に現れます。
一方で、フリーキャッシュフローが23%減りながらも市場予想を上回り、株価が時間外で8%上昇したことは、投資家が「稼ぎながら投資できている」と判断したことを示します。この均衡が崩れたときにいちばん先に動くのが料金だという点は、覚えておく価値があります。
まとめ
2026年7月29日(米国時間)に発表されたMicrosoftの2026年度第4四半期決算で、GitHub Copilotのユーザー数が5,000万人、Microsoft 365 Copilotの有償シートが3,000万席超に達したことが明らかになりました。有償シートは半年で倍増し、直近1四半期だけで1,000万席増えています。
この2つの数字は物差しが違います。GitHub Copilotの「ユーザー」には無料プランの利用者が含まれ、有償の契約数を示すものではありません。製品を比べるときは混ぜずに読む必要があります。
Azureは年間売上が初めて1,000億ドルを超え、年度で41%増。四半期の成長率は43%と前四半期の40%から加速しました。四半期売上は900億ドル、純利益は358億ドルです。
一方、2026年度の設備投資は1,159億ドルで前年度の約1.8倍。四半期のフリーキャッシュフローは196億ドルまで23%減りました。会社が示した2027年度の見通しは約1,750億ドルで、増額は続きます。
そして6月に反発を招いた従量課金は、Copilotの売上を前四半期比60%超のペースで押し上げていました。次に見るべき日付は9月1日です。BusinessとEnterpriseの優遇クレジット枠が標準枠へ戻る予定日で、この決算はその予定を覆す材料にはなっていません。それまでに、自分の請求明細でクレジットの消費ペースを一度だけ確かめておくと、当日の請求額を驚かずに迎えられます。
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