画像生成AI大手のMidjourneyが、占いアプリ「Co-Star」を買収していたことが2026年7月下旬に明らかになった。買収そのものはこの春に静かに済ませていたといい、外部への公表は7月23〜24日(米国時間)、Bloombergの報道が最初だった。星占いアプリと画像生成AIという、一見なんの接点もない組み合わせに戸惑った読者も多いはずだ。

だがこの一手は、Midjourneyという会社が何者で、これからどこへ向かおうとしているかを映す小さな窓になっている。ChatGPTGeminiを運営する大企業が巨額の資金を投じてインフラを積み増す一方、Midjourneyは外部資金を一切入れずに黒字を保ってきた変わり種だ。その会社が、なぜ占いアプリを選んだのか。読者にとっての意味まで含めて整理する。

⚠ 情報の鮮度について
本記事は2026年7月27日時点で報じられている情報をもとに構成しています。買収額などの財務条件はMidjourney側が非公開としており、公式発表がない数値は「推定」「※観測」と明記しています。最新の状況は各社の公式発表でご確認ください。

何が起きたのか──占いアプリの静かな身売り

Co-Starは、生年月日と出生時刻・出生地から算出する「ホロスコープ(出生図)」をもとに、AIと人間のライターが共同で書く占い文・相性診断・アドバイスを提供するアプリだ。友人同士でホロスコープを共有し合う機能が若い世代に広がり、月間アクティブユーザーは約430万人に達している。この会社を、Midjourneyがまるごと買収した。

430万 Co-Starの月間アクティブユーザー
24名 Midjourneyに合流したCo-Star社員
$0 Midjourneyが外部から調達した資金
2022 Midjourney創業年

買収額などの財務条件は非公開。Co-Starの共同創業者バヌ・ギュラー氏率いる約24名のチームはMidjourneyに合流するが、Co-Star自体はブランドも運営もそのままギュラー氏の裁量下に残るという。Midjourney創業者のデイビッド・ホルツ氏は「彼女とは5年以上前から知り合いで、頻繁に議論を重ねてきた。彼女の見識を深く尊重している」という趣旨のコメントを寄せている。

一言でまとめると──「画像生成で名を上げたMidjourneyが、Discordの外に自前の消費者接点を持つための足がかりとして、占いアプリを丸ごと引き入れた」。それが今回の買収の実態です。

なぜ「占いアプリ」なのか

Midjourneyはこれまで、自社のWebサイトやアプリではなく、チャットサービス「Discord」上で画像生成サービスを提供してきた。ユーザー登録も課金も生成も、すべてDiscordのサーバー内で完結する仕組みだ。裏を返せば、ユーザーの連絡先も利用データも、Midjourney自身が直接握っていない状態がずっと続いてきたことになる。

01
Discordに依存しない顧客接点

Co-Starは自前のモバイルアプリとして数百万人のユーザーに直接リーチしている。Midjourneyにとっては、他社プラットフォームを介さずユーザーと直接つながる初めての足場になる。

02
単体アプリ開発の経験値

Midjourneyは長年Discord頼みで、自社アプリの開発・運用経験が薄い。Co-Starのチームごと迎え入れることで、モバイルアプリの設計・運用ノウハウを一気に取り込む狙いがあるとみられる。

03
初の単体画像生成アプリへの布石

Midjourneyは先月、初のスタンドアロン画像生成アプリを開発中だと明かしていた。Co-Starの買収は、その計画を支えるチームと知見を同時に手に入れる一手と位置づけられる。

04
半年で「同規模の野心的な計画」を複数予定

ホルツ氏は、今後半年のうちに同じくらい野心的なプロジェクトを半ダース程度発表する考えを示している。Co-Star買収は、単発の出来事ではなく一連の拡張路線の一つ目という位置づけだ(※観測を含む)。

💡 見方のコツ
「画像生成AIが占いアプリを買った」という組み合わせの意外性に目を奪われがちですが、本質は占いそのものではありません。人間味のある文章とパーソナライズ体験を、自社の消費者アプリとして届けた実績を持つチームを手に入れたこと。ここが今回の買収のいちばんの狙いだと考えられます。

Midjourneyという会社の異質さ

今回の買収を理解するうえで欠かせないのが、Midjourneyの経営スタイルそのものだ。同社は2022年の創業以来、ベンチャーキャピタルからの資金調達を一度も行っていない。広告も持たず、月額制のサブスクリプション収入だけで事業を回し、創業から間もない時期に黒字化したと繰り返し報じられてきた。年間経常収益(ARR)は5億ドル前後(推定・非公開企業のため公式数値ではない、※観測)とされ、従業員一人あたりの収益効率は業界でも際立って高いとされる。

ℹ 対照的な業界の景色
同じ時期、ChatGPTを運営するOpenAIは、2030年までのAIインフラ投資計画を7,500億ドル規模まで引き上げたと報じられている。データセンター・クラウド契約・チップ調達に巨額を投じ続ける大手ラボが並ぶなかで、外部資金ゼロ・黒字経営のMidjourneyは、規模こそ違えど際立った異質さを保っている。

この体質の違いは、ユーザーにとって無関係な話ではない。資金調達や上場を控えた企業は、投資家への説明責任から値上げや広告導入、機能の有料化に踏み切りやすくなる。外部資金に縛られていないMidjourneyは、そうした圧力から一定の距離を置ける立場にある。今回の買収も、株式の希薄化や借り入れではなく、あくまで自己資金の範囲で行われたとみられる点は見逃せない。

Midjourneyを使う人は、いま何をすべきか

結論から言えば、既存ユーザーが今日から何かを変える必要はない。画像生成の使い勝手や料金プランに、この買収を理由にした直接の変更は今のところ発表されていない。

A
Discord運用は当面継続と見てよい

単体アプリの開発は始まったばかりの段階で、Discordでの提供が急になくなる話ではない。今すぐ乗り換え先を探す必要はない。

B
「独自アプリ化」は中長期の変化として意識しておく

単体アプリが実際に登場すれば、UIや通知、コミュニティ機能のあり方が変わる可能性がある。半年以内に他の発表も控えているとされ、Midjourneyの提供形態は今後数四半期でじわじわ姿を変えていくとみられる。

むしろ注目すべきは、Midjourneyが画像生成という専門領域を超えて「消費者向けAIアプリの会社」へと軸足を広げつつある点だ。Midjourneyの口コミ・評判を見ながら画像生成AIを選んでいる読者にとっては、単なる一ツールの評価だけでなく、運営会社がどんな方向に事業を伸ばそうとしているかも、長く使い続けるかどうかを判断する材料になる。画像生成AIの一覧で他の選択肢と比べておくのも悪くない。

編集部の見立て

Editor's Opinion

今回の買収でまず印象に残るのは、Midjourneyが「画像生成の会社」という自己定義を静かに手放しにかかっていることだと考えます。占いアプリという意外性の裏にあるのは、Discordというプラットフォームに預けたままだった顧客接点を、自分たちの手に取り戻そうとする動きです。

一方で、外部資金を入れずに拡張路線を進めるという選択には、相応の慎重さも透けて見えます。巨額の資金調達で一気にアプリ帝国を築こうとする大手ラボとは対照的に、Midjourneyは自己資金の範囲で買収と新規開発を積み重ねる道を選んでいる。この歩幅の違いが、今後の競争でどんな差につながるかは、まだ見通せません。

だからこそ注視すべきは、半年以内に控えているという追加発表です。単体アプリと合わせて、Midjourneyが本当に「画像生成ツール」から「消費者向けAIアプリ企業」へと看板を掛け替えるのか。今回の買収は、その最初の一手に過ぎません。

まとめ

2026年7月下旬、Midjourneyが占いアプリ「Co-Star」(月間アクティブユーザー約430万人)をこの春に買収していたことが明らかになりました。買収額は非公開ですが、Co-Starのチーム約24名がMidjourneyに合流し、ブランドと運営はギュラー氏の裁量下に残るとされています。

背景にあるのは、Discordというプラットフォームへの依存から抜け出し、自前の消費者接点を持とうとするMidjourneyの拡張戦略です。初の単体画像生成アプリの開発も進行中とされ、半年以内に同規模の発表が続く見通しも示されています。

外部資金を入れずに黒字を保ってきたMidjourneyの経営スタイルは、巨額投資を続ける大手AIラボとは一線を画します。その体質の違いが、値上げや広告導入への圧力の強さという形でユーザーに跳ね返ってくるかどうか――今後の単体アプリの中身とあわせて、注視しておく価値があります。

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