Gemini を世に出しているAlphabetが10月28日、2026年7〜9月期の決算を公表した。売上は前年同期比25%増の約1,276億ドル。クラウド事業のGoogle Cloudは103%増の約307億ドルで、前年同期の約152億ドルからほぼ2倍になった。AIの需要は、数字の上では期待どおりに来ている。
同じ資料の別のページに、もう一つの数字がある。この四半期のフリーキャッシュフローは約91億ドルのマイナスで、4〜6月期に続く2期連続の現金流出だった。原因は売上ではなく、1四半期で約514億ドルに達した設備投資のほうである。
AIを選ぶ人にとって、他社の決算書は本来どうでもいい話だ。ただし今回は、数字と値札が直接つながっている。Googleが自社の価格表に書き込んでいる値上げの日付は、Gemini 4 Argonが12月1日、Gemini 3.8 Flashなどが2027年1月1日。安い料金には、もう期限が書かれている。
Alphabetの決算は何を示したか──数字の並べ直し
最初に、報じ方によってばらつく部分を同社の発表どおりに並べておく。Alphabetは四半期ごとに、事業ごとの売上と利益、そして現金の出入りを同時に公表する。今回はこの3つが別々の方向を向いた。
| 項目(2026年7〜9月期) | 前年同期 | 今期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上(全社) | 約1,023億ドル | 約1,276億ドル | +25% |
| Google Cloudの売上 | 約152億ドル | 約307億ドル | +103% |
| Google Cloudの営業利益 | 約36億ドル | 約111億ドル | 約3.1倍 |
| 検索などの広告売上 | 約566億ドル | 約634億ドル | +12% |
| 営業利益(全社) | 約312億ドル | 約406億ドル | +30% |
| 1株あたり利益 | 2.87ドル | 2.12ドル | 減少 |
| 設備投資 | 約240億ドル | 約514億ドル | 大幅増 |
売上と営業利益は増えているのに、1株あたり利益だけが減っている。この差は本業ではなく、保有している株式などの評価によるものだ。同社は営業外の損益を約82億ドルのマイナスとして計上しており、前年同期は約128億ドルのプラスだった。本業の外側で、1年前と正反対の数字が立っている。
需要そのものは落ちていない。CEOのサンダー・ピチャイ氏は発表文で、Geminiアプリの利用者が10億人に達し、Google史上もっとも速く伸びた製品になったと述べている。検索の問い合わせ件数の伸び率も、過去5年でもっとも高いという。クラウドの103%増という数字は、売り先が足りないという話ではない。
売上が2割5分伸びた四半期に、現金は出ていった
決算書のうち、投資家が今回いちばん見ていたのは利益ではなく現金の欄だった。Alphabetはフリーキャッシュフロー(営業活動で入ってきた現金から設備投資を引いた残り)を四半期ごとに公表している。その推移が、この1年でひっくり返った。
設備投資は4四半期連続で増え、1四半期で約514億ドルになった。これは同じ四半期の売上約1,276億ドルの、およそ4割に相当する額である。一方で営業活動から入ってきた現金は約423億ドルで、前年同期の約484億ドルより減っている。入りが減り、出が増えた。差が約91億ドルのマイナスという形で表に出た。
ただし、全部が設備投資のせいではない。同社の最高財務責任者は決算説明の場で、営業キャッシュフローが押し下げられた理由として、自社開発のAIチップであるTPUを販売するための在庫の積み上げと、2018年の欧州委員会の制裁金に対する約52億ドルの支払いを挙げている。制裁金は不服申し立ての手続きが終わったことによる一度きりの支出だ。設備投資の中身についても、約65%がサーバーとネットワーク機器(耐用年数はおよそ6年)、残り約35%がデータセンター(同7〜40年)という内訳が示されている。
手元の現金が尽きかけているわけでもない。同社は四半期末時点で現金と市場性のある有価証券を約2,651億ドル持っている。今回の2期連続のマイナスは、資金が枯れた結果ではなく、入ってくる速さより先に払う額を大きくした選択の結果である。
1〜9月の累計で見ると、設備投資は約1,320億ドル。前年同期の約636億ドルから2倍を超えた。一方、直近12か月を通したフリーキャッシュフローはまだ約197億ドルのプラスである。つまり「赤字になった」のではなく、四半期という単位では現金が出ていく側に振れたのが今回の姿だ。
では足りない分はどこから来ているのか。同社は今期、社債の発行で約287億ドルを、自社株の売り出しで約124億ドルを調達している。長期借入金の残高は2025年末の約465億ドルから、9月末には約1,251億ドルへ増えた。9か月で約2.7倍である。自動運転のWaymoについても、10月28日付で50億ドルの担保付き融資の契約が結ばれたことが開示されている。
この現金の欄に市場が反応したと、複数の媒体が翌10月29日のAlphabet株の下げを伝えている。下げ幅は約12.6%、終値は283.82ドルという数字が並ぶが、取引所の公表データそのものでは確認できていないため、ここでは※観測として扱う。株価がどう動いたかは、ここでの本題ではない。重要なのは、反応の対象になったのが売上ではなく現金の欄だったという点である。
貸借対照表に載っていない9,244億ドルの約束
借入金は貸借対照表に載る。だが今回の資料でより大きいのは、まだ載っていない約束のほうだった。Alphabetは四半期報告書(Form 10-Q)の中で、将来支払う契約上の義務を列挙している。
9月30日時点の物品購入の約束は合計で9,244億ドル。このうち8,021億ドルが、技術インフラと在庫部品、電力の引き取り契約、コンテンツのライセンスといった複数年の契約だ。そして2,134億ドルは12か月以内に支払期限が来る。直近12か月に営業活動から入ってきた現金が約1,796億ドルだったので、1年で入る現金より、1年で払う約束のほうが大きい。
これに加えて、まだ始まっていないリースがある。
As of September 30, 2026, we have entered into leases, primarily related to data centers and energy infrastructure, that have not yet commenced with future lease payments of $130.5 billion that are not yet recorded.
訳すと「2026年9月30日時点で、主にデータセンターと電力インフラに関する、まだ開始していないリース契約を締結しており、その将来の支払額1,305億ドルはまだ記録されていない」となる。開始は2026年から2031年にかけてで、解約できない期間は1年から26年と書かれている。26年の解約不能契約というのは、2052年まで払い続ける約束があるという意味だ。
同じ欄には、出資先への将来の払い込み約束が219億ドルあるとも書かれている。物品購入の9,244億ドル、未開始リースの1,305億ドル、この219億ドルを足すと貸借対照表に載っていない将来の支払い約束は合計で1兆768億ドルになる。別枠の「条件付きの約束」として、データセンターの支払いを肩代わりする取り決めが757億ドル、電力契約に関わる設備調達の保証が228億ドルあることも開示されている。こちらは相手が約束を守れなかったときに出ていく性質の金額で、実際に払うとは限らない。
電力の引き取り契約や長期のリースは、需要が読みより小さかった場合でも支払いが続く。同社は資料の中で、開示額は現行契約の上限での数量と価格を反映したものだと注記している。
固定費が先に決まると、埋めるための売上が要る。クラウドの値引きで量を取るのか、単価を上げて利益を取るのか。選択の幅はこの固定費の大きさで決まる。
発電所の契約も借入金も、利用者の画面には出てこない。出てくるのは1か所、価格表の数字だけである。そこに何が起きているかは次の章で見る。
来年の見通しについて、同社は2026年通年の設備投資の計画を1,950億ドルから2,050億ドルの範囲で据え置き、2027年はさらに大幅に増やすと説明している。具体的な金額は第4四半期の決算説明で示すとしており、現時点では数字が出ていない。
供給の側も詰まっている。同社の説明では、第3四半期の終わりから自社以外の計算資源を借り始め、第4四半期はその利用を増やすという。その結果としてクラウド事業の利益率には短期的な逆風がかかるとも述べている。自前の設備が足りないあいだ、他社から借りた計算で需要をしのぐ形になる。ここは単価の決まり方に直接つながる部分だ。
Geminiの料金はいつ上がるのか──公式価格表に書いてある日付
ここからは推測の話ではない。Googleの開発者向け価格ページには、現在の単価と、それが切り替わる日付が並記されている。2026年10月31日時点の掲載内容は次のとおりだ。
| モデル(100万トークンあたり・標準) | 現在 | 切り替え後 | 切り替え日 |
|---|---|---|---|
| Gemini 4 Argon 入力 | 2.00ドル | 4.00ドル | 2026年12月1日 |
| Gemini 4 Argon 出力 | 10.00ドル | 20.00ドル | 2026年12月1日 |
| Gemini 3.8 Flash 入力 | 0.75ドル | 1.50ドル | 2027年1月1日 |
| Gemini 3.8 Flash 出力 | 3.75ドル | 7.50ドル | 2027年1月1日 |
| 文脈キャッシュの保管料 | 0.50ドル/時間 | 1.00ドル/時間 | 2027年1月1日 |
いずれもきれいに2倍である。Gemini 4 Argonの値上げは一般公開の時点で予告されていたもので、当サイトでも10月14日の記事で扱った。今回あらためて価格ページを開くと、同じ形の切り替えがFlash系と音声合成系にも広がり、期限が2027年1月1日に設定されていることが分かる。Gemini 3.6 Flash、Gemini 3.8 Flash TTS、Gemini 3.8 Flash-Lite TTSも同じ日付で2倍になる。
そして、Google自身が今の値段を何と呼んでいるかが、クラウド側の価格ページに書かれている。
Gemini 3.8 Flash, Gemini 3.7 Flash, Gemini 3.6 Flash, and CodeMender using these models are offered with introductory pricing of $0.75 / $3.75 per 1M tokens input / output through December 31, 2026. Starting January 1, 2027, standard pricing of $1.5 / $7.5 per 1M tokens input / output will apply.
訳すと「これらのモデルは2026年12月31日まで、100万トークンあたり入力0.75ドル・出力3.75ドルの導入価格で提供される。2027年1月1日からは、標準価格の入力1.5ドル・出力7.5ドルが適用される」となる。いま払っている額は導入価格(introductory pricing)であって、標準価格(standard pricing)は倍のほうだと、Google自身の言葉で書かれている。
無料で使える範囲も、この秋に狭まった。Geminiアプリで自分でモデルを選べる無料枠は10月9日からFlash-Liteだけになっている(詳しくは10月5日の記事)。開発者向けでは、最上位のGemini 4 Argonはそもそも無料枠に含まれていない。
同じ価格ページには、11月に入ってから適用される別の変更も注記されている。出力が3万2,000トークンを超えた場合、クライアント側やサーバー側のタイムアウトで最終的に失敗したリクエストでも、取り出せた分のトークンは課金されるというもので、適用開始は2026年11月13日と書かれている。長い出力を扱う処理では、失敗したときの扱いが変わる。
タイムアウトしたリクエストの課金が変わる Gemini 4で出力が3万2,000トークンを超えた場合、タイムアウトで失敗しても取り出せた分は課金される。
Gemini 4 Argonの現行価格の最終日 入力2.00ドル・出力10.00ドルで使える最後の日になる。
Gemini 4 Argonが2倍へ 入力4.00ドル・出力20.00ドル。Batch・Priorityの各階層も同じ日に2倍になる。
Flash系の導入価格の最終日 Gemini 3.8・3.7・3.6 Flashの入力0.75ドル・出力3.75ドルが、この日までの価格と明記されている。
Flash系と文脈キャッシュの保管料が2倍へ 入力1.50ドル・出力7.50ドル。音声合成系も同じ日付で上がる。
補足しておくと、Alphabetは決算の中で「クラウドの値上げ」を一言も述べていない。ここに並べたのは価格ページに掲載された日付と単価であり、決算の数字との因果関係は同社が説明したものではない。結びつけているのは本記事の読み方である点は区別しておきたい。
選ぶ側が11月のうちに決めること
日付が決まっている変更に対しては、やることも日付で決まる。Geminiを業務で使っている場合、11月30日までに手を付けられるのは次の3つである。いずれも見積もりではなく、手元の明細を数えるだけの作業だ。
Gemini 4 Argonを使っているなら、12月分はほぼそのまま倍になる。月100ドル使っているなら200ドルである。その額で続けるかどうかの判断は、請求書が届く前にできる。
Gemini 3.8 Flashの値上げは2027年1月1日で、Argonより1か月遅い。分類・要約・整形のような、出力のばらつきが小さく間違いに気づける処理は、12月のうちに移しておけば1か月分の差が出る。
保管料は100万トークンを1時間置くごとの課金で、こちらも1月1日に2倍になる。長い資料を貼ったまま放置する使い方をしているなら、保管時間の実績を一度見ておく価値がある。
もうひとつ、決算から読める実務的な点がある。同社の資料では、営業利益の内訳に「Alphabet全体の活動」という項目があり、今期は76億5,500万ドルのマイナスだった。注記には、これが主に全社で共有しているAIの研究開発費だと書かれている。前年同期は44億6,700万ドルのマイナスである。モデルを作る費用は、クラウドの事業の外側に置かれたまま増え続けている。
編集部の見立て
今回の決算でいちばん手に取りやすいのは、103%という伸び率ではなく、価格ページの「through November 30, 2026」という1行だと考えています。ここ1年、AIの料金は下がり続けるものとして語られてきました。モデルが新しくなれば単価が落ちる、という経験が実際に何度も繰り返されたからです。今回は違う形が出ました。同じモデルの、同じ階層の値札に、上がる日付が最初から書かれているという形です。
これは値上げの予告というより、価格表の性質が変わったことを示しているように見えます。しかもそれは解釈ではなく、クラウド側の価格ページにGoogle自身の言葉で書かれていました。いま払っている額が「導入価格」で、倍のほうが「標準価格」です。安いあいだに組んだ処理が、期限のあとも同じ費用で回るとは限りません。
設備投資と約束の金額を並べると、その理由は想像しやすくなります。1年で払う約束が、1年で入る現金を上回っている。26年の解約不能なリースが、まだ記録されずに控えている。この構造で単価を下げ続けるのは難しく、どこかで価格表の側に反映されます。今回示された12月1日と1月1日は、その最初の分かりやすい形だと見ています。
読者の立場で言えば、心配すべきなのはAlphabetの財務ではありません。自分が組んだ処理の費用が、どの日付の単価に乗っているかです。日付が公開されている以上、これは予測ではなく確認の作業になります。
まとめ
Alphabetが2026年10月28日に公表した7〜9月期決算で、売上は25%増の約1,276億ドル、Google Cloudは103%増の約307億ドルになりました。営業利益は30%増の約406億ドルですが、1株あたり利益は2.87ドルから2.12ドルへ減っています。差は本業ではなく、約82億ドルのマイナスとなった営業外の損益によるものです。
設備投資は1四半期で約514億ドルに達し、フリーキャッシュフローは約91億ドルのマイナスで2期連続の流出になりました。直近12か月では約197億ドルのプラスを保っています。同社は流出の理由として設備投資のほかに、TPUの販売用在庫の積み上げと、欧州委員会の制裁金に対する約52億ドルの一度きりの支払いを挙げています。手元の現金と有価証券は約2,651億ドルあります。
資金は借入と株式の発行で手当てされており、長期借入金の残高は2025年末の約465億ドルから9月末の約1,251億ドルへ、9か月で約2.7倍になりました。四半期報告書には貸借対照表に載っていない約束も記載されています。物品購入の約束が9,244億ドル(うち12か月以内の支払いが2,134億ドル)、開始前のデータセンター・電力向けリースが1,305億ドル、出資先への払い込み約束が219億ドルで、合計1兆768億ドルです。2026年通年の設備投資の計画は1,950億ドルから2,050億ドルで据え置かれ、2027年はさらに大幅に増やすと説明されています。
Googleの公式価格ページには、Gemini 4 Argonの単価が2026年12月1日に入力2.00ドルから4.00ドル・出力10.00ドルから20.00ドルへ、Gemini 3.8 FlashなどのFlash系と音声合成系が2027年1月1日に同じく2倍になると書かれています。Flash系の現在の単価について、同社は「導入価格」、倍のほうを「標準価格」と呼んでいます。文脈キャッシュの保管料も1月1日に2倍です。加えて11月13日からは、出力が3万2,000トークンを超えたリクエストがタイムアウトで失敗しても、取り出せた分は課金されます。なお、Alphabetは決算の中でクラウドの値上げには触れていません。
次に価格表が動くのは12月1日だ。Gemini 4 Argonの出力単価が10.00ドルから20.00ドルになり、1か月遅れて1月1日にFlash系と保管料が続く。10月の請求書は、その前の値段で刷られた最後の数枚ということになる。