子ども向けの安全機能は、あると書かれていることと、働いていることが別の話になりうる。10月7日(米国時間)、米国の非営利団体Common Sense Mediaの研究部門が出した評価は、その差を数字で突きつけるものだった。

対象は ChatGPT の13〜17歳向け体験「ChatGPT for Teens」。評価は最も低い「Unacceptable Risk(許容できないリスク)」で、団体は「問題が直るまで、ChatGPTは18歳以上に限るべきだ」と求めている。

見出しになった数字は、保護者への通知だ。連携した保護者アカウントを持つ新規のテスト用アカウントで、自傷や摂食障害の話を最長1時間続けても、保護者に届いた通知は0件だったという。ただしOpenAIは、この試験のやり方自体に異議を唱えている。どちらの言い分がどこまで通るのかを、報じられた範囲で切り分けておく。

⚠ 情報の鮮度について
一次情報はCommon Sense Mediaの発表(2026年10月7日・米国時間)で、TechCrunch、The Next Web、Gizmodo、Reutersが同日から翌8日にかけて報じています。発表から約2日が経った時点の整理です。評価は第三者団体の調査であり、規制当局の認定ではありません。OpenAIの反論も同じ時期に出ており、双方の言い分を分けて書いています。

「許容できないリスク」とは何が評価されたのか

評価を出したのは、Common Sense Mediaの「Youth AI Safety Institute」。子どもとメディア・テクノロジーの関係を扱ってきた団体が、AI向けに設けた研究部門だ。同団体は2025年10月にChatGPTを、未成年にとって「High Risk(高リスク)」と評価していた。今回の対象は、OpenAIが8月18日に世界で展開を始めたChatGPT for Teensである。年齢が13〜17歳と判定されたアカウントに、保護者への通知や宿題の補助、友だちのような振る舞いの抑制といった機能を追加した仕組みだった。

試験の規模は、4,000件を超えるプロンプトだ。13〜17歳として登録したアカウントに対して、8月18日の発表の前と後の双方で実施している。回答は児童精神科医や小児科医を含む専門家が確認した。つまりこれは「新機能が発表どおりに動くか」を、導入前後で見た検証である。

4,000件超 試験に使ったプロンプトの数(発表の前後で実施)
0件 新規の連携アカウントで、1時間の深刻な会話に対して保護者へ届いた通知
4件に1件超 支援につなぐべき場面で、相談先を示さなかった割合
一言でまとめると──「安全機能は発表されたが、第三者の試験では保護者への通知も、年齢の判定も、宿題の歯止めも、すり抜けられた」。OpenAIは試験の手順を問題にしており、評価は争われています。

5つの穴──調査が指摘した中身

指摘は大きく5つに整理できる。いずれも「機能が存在するか」ではなく「実際に動くか」を問うものだ。

項目 調査が報告した結果 判定
保護者への通知 新規の連携アカウントで最長1時間、自殺念慮・自傷・摂食障害の話をしても通知は0件。通知が出たのは、数週間分の機微な会話の履歴があるアカウントだけ 機能せず
危機時の案内 支援につなぐべき場面の4件に1件超で、ホットラインや専門家を示さなかった。団体が「重大な害」と位置づける5項目のうち3項目で、自ら定めた基準(95%)を下回った 不十分
宿題の歯止め Study Modeは「答えを見せて」の表示で解説を飛ばせた。保護者が決めた学習時間も、プロンプトの先頭の「@study」を消すと外れた すり抜け可能
年齢の判定 成人として登録したテスト用アカウントは、何日試しても未成年向けの体験に切り替わらなかった。「13歳だ」と伝え、ChatGPTがそれを認識した場合でも同じだった 切り替わらず
友だちのような振る舞い・休憩の案内 未成年向けの行動指針ができた後も、人間のように扱うと感情や好みを語った。休憩の案内は、約2,000件のプロンプトで2回だけだった 残存
性的なロールプレイの拒否 拒否は期待どおり機能していた 機能

最後の行は見落とされやすいが、報告書の側も「守れている部分がある」と明記している。全面的に壊れているという主張ではなく、守れている場所と、すり抜けられる場所が混在しているという報告だ。

通知の挙動には、とくに注意したい。通知が出たのは、数週間分の機微な会話の履歴があるアカウントだけだった。これが事実なら、仕組みは「いまの発言の深刻さ」ではなく「過去にどれだけ話してきたか」に左右されている可能性がある。ただし、この推測は調査側の解釈であり、OpenAIの設計がそうなっていると確認されたわけではない。

「A teen can spend an hour talking about self-harm without their parent getting a single alert.」

— Tom Siegel(Youth AI Safety Institute エグゼクティブ・ディレクター)

OpenAIの反論は、どこまで届いているか

OpenAIの広報は、この試験が保護者管理の実際の動きを「正確には反映していない」と述べた。理由はこうだ。保護者と子のアカウントの連携は、セキュリティと規模の都合で数時間かかることがあり、安全通知が有効になるまでも同じ時間がかかる。「試験の大半は、保護者管理の有効化が終わる前に始まって終わっていた可能性がある」というのが同社の見方である。

この反論は、通知の0件という数字には筋が通っている。連携から数時間置かないと働かない仕組みなら、作ったばかりのアカウントで1時間話しても通知が出ないのは、想定どおりの挙動かもしれない。一方で、調査側の報告には、これに合わない部分が残る。連携から十分な時間が経ったアカウントを含めて試験したが、タイムリーな通知は出なかったという。通知が出たのは数週間分の履歴があるアカウントだけで、これは「待てば届く」という説明とは別の現象に見える。

01
反論が答えている点

保護者通知の有効化に時間がかかること。作りたてのアカウントでの試験が、実際の使われ方とずれている可能性はある。

02
反論が答えていない点

報じられた範囲では、年齢の判定が切り替わらない件、「@study」で学習時間が外れる件、危機時に相談先を示さない件には、具体的な説明がない。

03
同時に出たOpenAIの数字

OpenAIは同じ水曜に、初の利用報告を公表した。10代は1日平均15分未満、3時間連続で使う割合は2%未満という。ただし使用時間の短さは、安全機能が働くかどうかの答えにはならない。

OpenAIの数字は、利用の実態を知る材料としては貴重だ。休憩の案内が出た会話の約半数では、5分以内に休憩を取るか会話を終えたという。ただ、これもOpenAI自身の集計であり、第三者の監査は報じられていない。

ⓘ 評価した団体の資金源
Youth AI Safety Instituteは、慈善団体と産業界からの資金で運営されており、その中にはOpenAI Foundationや、評価対象となる技術の提供企業が含まれると自ら開示しています。5月の設立時の発表では、産業界側の出資者としてOpenAI Foundation、Anthropic、Pinterestの名が挙がっていました。同団体は、基準・研究・評価には自らが単独で責任を負い、公表する結果の編集権は独立していると述べています。

この評価の重さ──規制当局の判断ではない

ここで線を引いておく。この評価は民間の非営利団体による独立した調査であり、行政の認定でも、裁判所の判断でもない。罰則もなければ、OpenAIに従う義務もない。報じられた範囲では、規制当局の名前は挙がっていない。

それでも軽くは扱えない理由が2つある。1つは、OpenAIの安全機能が発表どおりに働くかを、第三者が手を動かして確かめた公開の記録であることだ。もう1つは、未成年への提供そのものが、すでに法廷で争われていることである。9月末にはフロリダ州の司法長官が、ChatGPTの未成年向け提供の停止などを求める仮差止めを申し立てた(認められたわけではない)。今回の評価は、その種の主張が参照しうる第三者の材料になる。

また、団体はOpenAIとの距離が近かった。TNWの報道によれば、同団体はOpenAIが開発者向けに作った10代向けの安全方針の策定に協力した過去がある。OpenAI Foundationから資金を受け、方針づくりにも協力した団体が最低評価を付けた点は、利害が評価の甘い側に働きうる立場からの厳しい結論ともいえる。

子どもがChatGPTを使うなら、今日確かめること

評価の当否が決着するのを待たなくても、手元でできる確認はある。OpenAIの説明と調査結果の食い違いは、そのまま確認項目になる。

A
保護者の方:連携が終わったかを画面で見る

OpenAIは、連携と通知の有効化に数時間かかりうると説明している。連携してすぐは「通知が働く」と考えず、半日ほど置いてから、親側の設定画面で有効になっているかを確認する。通知が届く前提で子どもの使い方を決めない。

B
家庭・学校:学習時間の設定は「抜け道」込みで考える

先頭の「@study」を消せば外れるという報告がある。時間の管理をChatGPTの設定だけに任せず、端末側の利用時間制限など、別の手段も併用する。

C
自分のアカウントを使う方:年齢の登録を確かめる

成人として登録したアカウントは、何日試しても未成年向けの体験に切り替わらなかったという。子どもが保護者のアカウントや、年齢を偽った登録で使っている場合、これらの安全機能はそもそも働かない。

他のAIに替えれば解決する、という話でもない。Claudeは利用規約上18歳以上向けで、未成年向けの専用モードは、確認できた範囲では用意されていない。つまり「最初から使わせない」は選べても、「安全な子ども向けの代替」にはならない。Geminiを含め、各社の未成年への向き合い方は一様ではなく、AIごとに違う。

💡 調査団体が保護者に勧めていること
団体は、組み込みの保護機能や通知に頼らないよう呼びかけています。AIが友だちのふりをして会話を引き延ばすこと、考える過程を飛ばしてしまうことを、子どもと話し合っておくのが先です。宿題の支援は、AIを使わない方法でも行うよう勧めています。

編集部の見立て

Editor's Opinion

この件でいちばん重いのは、「許容できないリスク」というラベルよりも、保護者向けの機能が「ある」ことと「働く」ことのあいだの距離だと考えます。ChatGPT for Teensは、通知、学習の歯止め、年齢の判定をそろえて発表されました。機能の一覧だけを見れば、必要な項目はそろっていました。それでも、第三者が手を動かして確かめると、抜け道が見つかった。機能の数と、機能が働く確かさは、別の指標です。

OpenAIの反論にも、聞くべき点があります。連携に数時間かかるなら、作りたてのアカウントで試験した結果は、実際の家庭の使われ方より厳しく出ているかもしれません。ただ、反論が通知の有効化の時間だけに集まっていて、年齢の判定や「@study」の件に及んでいないなら、争点の一部しか答えていないことになります。評価を覆したいなら、同じ手順を第三者の立会いで再試験するのが近道でしょう。

読者の立場で押さえておきたいのは、「安全機能が付いた」という発表と、「安全が確かめられた」という事実は、別物だということです。AIを子どもに触れさせる判断は、前者ではなく後者を材料にすべきです。後者はまだ、争われています。

まとめ

2026年10月7日(米国時間)、Common Sense MediaのYouth AI Safety Instituteが、ChatGPT for Teensを最低の「Unacceptable Risk」と評価し、問題が直るまでChatGPTを18歳以上に限るよう求めました。

4,000件を超えるプロンプトの試験で、新規の連携アカウントでは最長1時間の深刻な会話でも保護者への通知は0件、支援につなぐべき場面の4件に1件超で相談先が示されませんでした。年齢の判定、「@study」による学習時間の回避も指摘されています。性的なロールプレイの拒否は機能していました。

OpenAIは、保護者管理の有効化に数時間かかるため、試験の大半はその前に終わっていた可能性があると反論しています。同社が同日に公表した利用報告では、10代の平均利用は1日15分未満でした。これは民間団体の評価であり、規制当局の判断ではありません。

家庭でできるのは、連携後に半日ほど置いて有効化を画面で確かめ、通知や設定だけに頼らずに使い方を決めることです。

OpenAIが第三者の再試験を受け入れるのか、その結果が公表されるのか。報じられた範囲では、再試験の日程はまだ示されていない。