GitHub CopilotでGeminiの旧モデルを指定していたなら、いま呼び出しているのは、もう自分が選んだモデルではないかもしれない。
2026年7月31日、GitHubは「Gemini 2.5 Pro」と「Gemini 3 Flash」を、Copilot Chat・インライン編集・Ask/Agentモード・コード補完のすべてから廃止した。エラーで止まるわけではない。多くの場面で、静かに別のモデルへ置き換わる。気づかないまま使い続けられてしまうところに、この廃止の厄介さがある。
何が起きたのか──Gemini 2.5 ProとGemini 3 Flashの廃止
GitHubのChangelogが公式に告知した内容は明快だ。Gemini 2.5 ProとGemini 3 Flashは、2026年7月31日をもってCopilotのすべての利用シーンから廃止された。対象はCopilot Chat、インライン編集、Ask/Agentモード、コード補完の4つ。VS Code・Visual Studio・JetBrains系IDE・Xcode・Eclipse・github.com・GitHub Mobileと、Copilotが動くほぼ全ての場所が含まれる。
移行先として案内されているのはGemini 3.1 ProとGemini 3.5 Flashの2つ。どちらもすでにCopilotで一般提供されている、廃止対象より新しい世代のモデルだ。GitHub自身は「廃止されたモデルを取り除くための作業は利用者側には不要」としている。裏を返せば、何もしなくても表面上は動き続けるということでもある。
予告から実施まで29日──なぜ「静かな廃止」になったのか
今回の廃止は、ある日いきなり降ってきたものではない。GitHubのChangelogを遡ると、Copilotの中のGemini系モデルは、この半年でほぼ毎月のように入れ替わってきたことが分かる。
Gemini 3.1 Proがパブリックプレビュー開始 Copilot Business・Enterprise・Pro・Pro+向けに、100万トークンのコンテキスト窓を持つ新モデルとして登場。
Gemini 3.1 ProがJetBrains・Xcode・Eclipseへ拡大 対応IDEが広がり、主要エディタのほぼ全てで使えるようになった。
Gemini 3.5 Flashが一般提供開始 Proクラスに近い精度をFlash並みの速度・コストで出せるモデルとして追加された。
Gemini 2.5 ProとGemini 3 Flashの廃止を予告 「7月31日に廃止する。廃止日までにGemini 3.1 ProかGemini 3.5 Flashへ移行してほしい」という告知が出た。
Gemini 3.6 Flashが一般提供開始 3.5 Flashよりさらに新しい世代が加わった(本サイトでも既報の、Claude Opus 5追加と同時期の動き)。
Gemini 2.5 ProとGemini 3 Flashを廃止 予告どおり、全てのCopilot体験からアクセスできなくなった。
並べてみると、廃止そのものより入れ替えの速さのほうが目を引く。2月にプレビューだった3.1 Proが定番になる前に、5月に3.5 Flashが加わり、7月には3.6 Flashまで来ている。廃止された2.5 Proと3 Flashも、半年前まではCopilotの主力候補だった世代だ。Copilotのモデル棚は、ユーザーが追いつけるペースをすでに超えて回転している。
見えない切り替えが引き起こす3つの落とし穴
今回の廃止が厄介なのは、GitHub自身が「利用者側の作業は不要」と説明している点だ。これは裏を返せば、古いモデル名を指定したままの設定が、エラーにならず別モデルへ差し替わって動き続けるということでもある。実際に、この動作に起因すると見られる報告が複数上がっている。
JetBrains版Copilotの利用者から、廃止が近いモデルに通常表示されるはずの警告アイコンが、モデルピッカーのUIに出ていなかったという報告がIssueで上がっている(7月5日提出)。表示に頼っていると、廃止に気づく機会そのものを逃す。
カスタムエージェントのYAMLフロントマターで「model: Gemini 3 Flash」のように名指しすると、モデルの解決に失敗し、指定とは異なる既定モデルへ自動的に切り替わって実行されるという不具合が、今回の廃止より前の3月時点ですでにIssueで報告されていた。同じ失敗パターンが起きうる以上、廃止されたモデル名を設定に残したままでも、エラーで気づけるとは限らない。処理は止まらないので、出力の傾向が変わったことにしか気づけない。
Copilot Enterprise・Businessでは、新しいモデルを組織内で使えるようにするにはモデルポリシーを個別に有効化する必要がある。旧モデルは消え、新モデルのポリシーはまだオフ、という空白期間が組織単位で起こりうる。
Copilotで使うモデルを確認する方法
心当たりがあるなら、この3つを順に確認すれば済む。どれも数分で終わる作業だ。
2. リポジトリの
.github/以下にあるカスタムエージェントの設定ファイルや、CIで使うYAMLの中に「Gemini 2.5 Pro」「Gemini 3 Flash」という文字列が残っていないか検索する。残っていれば、Gemini 3.1 ProかGemini 3.5 Flashへ書き換える。3. 組織のCopilot管理者であれば、設定画面のモデルポリシーでGemini 3.1 ProとGemini 3.5 Flashが有効になっているか確かめる。
とくに2番目のチェックは見落としやすい。会話の中でモデルを選ぶ操作は目に入るが、設定ファイルに書き込んだモデル名は、動いている限り誰も見返さない。エラーで教えてくれない廃止だからこそ、動いているように見える設定こそ疑う価値がある。
Copilotのモデル棚は、この半年で何度入れ替わったか
Geminiだけの話でもない。7月21日から24日の4日間だけで、GitHubはGemini 3.6 Flash・CLIの刷新・Claude Opus 5を立て続けに追加した。その数日後にはxAIの新フラッグシップGrok 4.5もCopilotに加わっている。追加が相次ぐ裏側で、今回のように古いモデルが静かに退場していく。
GitHubは7月2日の予告で、Gemini 2.5 ProとGemini 3 Flashを7月31日付で全てのCopilot体験から廃止し、それまでにGemini 3.1 ProかGemini 3.5 Flashへワークフローを更新するよう呼びかけていた。予告どおり、7月31日に廃止は実施されている。
OpenAI・Anthropic・Google・xAI・Moonshot AIのモデルが同じ画面に並ぶ「モデル商店」になったCopilotでは、追加のニュースは大きく扱われるが、廃止のニュースはほとんど話題にならない。しかし実務への影響は、追加より廃止のほうが大きい場面すらある。追加は選ばなければ関係ないが、廃止は選んでいた人に直接降りかかる。
編集部の見立て
今回の件で気になったのは、廃止という出来事そのものより、GitHubが「利用者側の作業は不要」と案内している点です。エラーで止めてくれたほうが、実は利用者にとって親切な設計だったのではないかと思います。止まれば気づけますが、動き続けると気づけません。
コーディング支援AIは、モデルを選ぶ画面の裏側で、実際にどのモデルが応答しているかを利用者が逐一確認する習慣を持ちにくいツールです。特にエージェントモードや自動化されたワークフローでは、出力さえ返ってくれば処理は完了したように見えます。その出力の質が、想定していたモデルによるものかどうかは、比べてみないと分かりません。
Copilotがモデルの選択肢を増やし続けていること自体は、利用者にとって歓迎できる流れです。ただし選択肢が増えるほど、その裏で何が廃止され、何に自動的に差し替わっているかを追う手間も増えます。この記事のチェック項目は、今回のGemini 2.5 Pro・Gemini 3 Flashに限った話ではありません。次に別のモデルが廃止されたときも、同じ3点を確認すれば足ります。
まとめ
2026年7月31日、GitHubはCopilotの全ての利用シーン(Chat・インライン編集・Ask/Agentモード・コード補完)から、Gemini 2.5 ProとGemini 3 Flashを廃止しました。7月2日の予告から29日後の実施です。
移行先として案内されているのはGemini 3.1 ProとGemini 3.5 Flash。GitHubは「利用者側の作業は不要」としていますが、これは古いモデルを指定した設定がエラーにならず既定モデルへ自動的に差し替わることも意味します。JetBrains版のモデルピッカーで廃止警告が表示されなかった報告や、エージェント設定のモデル名指定が無視されて既定モデルにフォールバックした報告も出ています。
心当たりがあるなら、IDEのモデルピッカー、リポジトリ内のエージェント設定ファイル、組織のモデルポリシーの3つを確認してください。
Copilotのモデル棚はこの半年、ほぼ毎月のように入れ替わってきました。次に何かが廃止されたときも、確認すべき場所は今回と同じです。