Microsoftが9月25日、Copilotの値付けの考え方を説明する記事を公式ブログに出した。骨子は一行で言える。日常の仕事は1人あたりの定額に含め、丸ごと任せる仕事はクレジットの従量課金にする。同社はこれを「プラグインハイブリッド車」にたとえている。定額のライセンスがバッテリーで、従量のクレジットがガソリンタンクだ、と。

同じ記事に、他社を名指ししない一文がある。「一部のベンダーは、日常的なAIの仕事までメーターに載せる。それは間違った取引だと考える」。

ところが、その同じMicrosoftの傘下で、GitHub Copilot はとっくにメーターの上に乗っている。月19ドルの席に付いてくるクレジットは1,900で、その枠は9月1日に3割以上削られたばかりだ。矛盾しているようで、実は矛盾していない。二つを並べると、いまAIの値札がどこで折れ曲がろうとしているのかが見えてくる。

⚠ 情報の鮮度について
一次情報はMicrosoftの公式ブログ「Evolution of the Copilot pricing model」(2026年9月25日)、同日更新のMicrosoft Learnの解説、および同社の「Copilot Credits Guide | September 2026」(PDF)です。いずれも編集部で原文を確認しています。この記事の公開時点で、一次情報からおよそ33時間が経過しています。価格はすべて米ドルの公表値で、9月27日時点のものです。日本円の価格や、販売パートナー経由の価格は別に設定されます。

Microsoft Copilotの料金はどう変わるのか──定額の階と従量の階

まず値札から確認する。企業向けのMicrosoft 365 Copilotは、公式ページの表示で年払い1人あたり月30.00ドル、月払いなら31.50ドル(年間契約)である。中小企業向けの追加ライセンスMicrosoft 365 Copilot Businessは年払い月21.00ドルで、いまは期間限定で18.00ドルになっている。この割引は公式ページに「2026年7月1日から2026年12月31日までの提供」と明記されている。月払いを選ぶと25.20ドルだ。

今回の発表は、この定額の値段そのものを動かす話ではない。定額に何が含まれ、何が含まれなくなるのかという線引きの話である。Microsoftはこの線を「日常のAI」と「任せるAI」と呼び分けた。

区分 中身 払い方
日常のAI Copilot Chat、Word・Excel・PowerPoint・OneNote・Outlook・Teams上のCopilot、Researcher / Analyst / Facilitatorといった同社製エージェント、メールやファイルを踏まえるWork IQ、そしてモデルの選択 ユーザーサブスクリプションライセンス(USL)=1人あたり定額に込み
任せるAI Cowork、Code、Autopilot、SharePointの新しい高度な機能、そしてFableやAstraといったフロンティアモデル Copilot Creditsによる従量課金(UBB)。USLを持っていることが前提

モデルの扱いも具体的に書かれている。定額側でも自分でモデルを選べて、GPT-5.6とSonnet 5は込み、Opus 5は上限付きで込みになる。既定の「Auto」を選べば、要求ごとに正確さ・速さ・費用を見て振り分けるので、利用者はモデル名を考えずに済む。上限に当たったときの挙動も書いてある。いきなり止まるのではなく警告が出て、Autoに切り替えて追加費用なしで続けるか、クレジットに移るかを選ぶ形になる。

30.00ドル Microsoft 365 Copilotの年払い月額(1人あたり)
0.01ドル Copilot Credit 1つの従量単価
5〜20% クレジットをまとめ買いしたときの割引幅
一言でまとめると──「毎日の細かい仕事の値段は固定されたまま、AIに丸投げする仕事だけがメーター式に切り出された」。使い方が変わらない人の請求書は変わりません。変わるのは、AIに半日走らせるような仕事を始めた人の請求書です。

Copilot Creditsとは何か──1クレジット0.01ドル、まとめ買いの割引は5%から20%

Copilot Creditsは、Microsoftのいろいろな製品にまたがる共通の通貨だと説明されている。Cowork、Copilot Studioで作ったエージェント、Dynamics 365やPower PlatformのAI機能、外部のエージェント向けのWork IQ APIが、同じクレジットを食う。消費量はテナント単位でまとめて数えられ、1回の応答や操作で何クレジット減るかは作業の複雑さで変わる。

買い方はひとつではない。基本になるのは後払いの従量メーターで、単価は1クレジットあたり0.01ドル。前もっての約束は要らず、使った分だけ月末に請求される。これと別に、1年前払いの事前購入プラン(P3)があり、まとめて買うほど割引が付く。

Copilot Credit事前購入プラン(P3)の9段階を、割引率の大きさに比例した横棒グラフで並べた図。30万クレジットで5%、150万で6%、300万で7%、1,500万で8%、3,000万で10%、7,500万で12%、1億5,000万で14%、2億2,500万で17%、3億で20%。購入量が1,000倍に開くのに対して、割引率は5%から20%までしか動かないことを示している。

この段差の付き方は、まとめ買いの常識からすると控えめだ。従量メーターの0.01ドルで換算すると、いちばん小さい30万クレジットは3,000ドル、いちばん大きい3億クレジットは300万ドルにあたり、購入量にして1,000倍の開きがある。それだけ積んでも割引は5%から20%までしか動かない。しかも1年の前払いなので、使い切らなかったクレジットは契約期間の終了時に失効する。

単価の見え方は、買う経路でも変わる。Copilot Studioには25,000クレジット入りの容量パックがあり、公式ページの表示は1パックあたり月200.00ドルである。同じ1クレジットでも、従量メーターで買うのか、容量パックで買うのか、前払いでまとめるのかで実質の単価は揃わない。「1クレジット0.01ドル」を全部の入口に当てはめないほうがよい。

裏を返せば、このクレジットは「安く買う」対象ではなく「使う量を読む」対象だということになる。Microsoftは消費量を見積もるための計算ツールを2種類用意していて、ひとつはCoworkとCopilot Studio内のGitHub Copilotハーネス向け、もうひとつはCopilot Studioや Dynamics 365 のエージェント向けだ。あらかじめ当てる作りになっているあたりに、量が読みにくい課金だという自覚がにじむ。

ⓘ 勝手に課金は始まらない
企業向けでは、管理者がMicrosoft 365管理センターで支出ポリシーを作るまで、従量課金の機能は止まったままです。Microsoftは「それまで何も請求されない」と明記しています。テナント単位・グループ単位の上限に加えて、グループポリシーの中でユーザーごとの上限も設定できます。上限に近づいたときに警告を出すか、追加を申請させるか、何も見せないかまで選べる作りです。

「メーターに載せるのは誤り」と書いた会社の、もうひとつのCopilot

今回の記事でいちばん引っかかるのは、定額を正当化した次の一段落だ。

私たちは意図してこの値付けをしている。一部のベンダーは、日常的なAIの仕事までメーターに載せる。それは間違った取引だと考える。すべての作業にメーターが付けば、企業はアクセスを配給制にしかねず、一部の人しかAIを使えなくなるからだ。誰もが使えるべきだと考えている。

原文: We price it this way on purpose. Some vendors put everyday AI work on a meter. We think that's the wrong deal, because when every task has a meter, companies may ration access and only some people get to use AI. We think everyone should.

— Microsoft「Evolution of the Copilot pricing model」(2026年9月25日)

この主張を、同じ会社が売っているGitHub Copilotの値札の隣に置いてみる。公式ドキュメントに載っている枠は次のとおりだ。

GitHub Copilotのプラン 月額(1席あたり) 含まれるGitHub AI Credits(月)
Copilot Pro 10ドル 合計1,500
Copilot Pro+ 39ドル 合計7,000
Copilot Max 100ドル 合計20,000
Copilot Business 19ドル 1,900
Copilot Enterprise 39ドル 3,900

コードを書く仕事は、席の値段だけでは終わらない。枠を使い切ればそこから先は従量になる。しかも9月1日には、6月から続いていた優遇枠が終わってBusinessとEnterpriseの含みクレジットが標準値へ戻り、席の月額は据え置きのまま使える量だけが縮んだ。詳しい経緯はGitHub Copilotの優遇クレジットが9月1日で終了した件の記事にまとめてある。

ここで大事なのは、Microsoftが二枚舌だという話ではない。「日常のAI」の中にコードを書く作業が入っていない、という線の引き方そのものが今回の宣言の中身だという点だ。実際、今回の記事でも「Code」は従量側に分類されている。定額で守られるのは、議事録を箇条書きにする、送られてきた資料を要約するといった、Microsoftが「サチュレーション(飽和)」と呼ぶ領域である。より賢いモデルを当てても結果が変わらなくなる仕事のことで、そこに高いモデルを割り当てても意味がないから固定価格でよい、という理屈になっている。

⚠ 同じ「クレジット」でも別の通貨
Microsoft 365側のCopilot CreditsとGitHub側のGitHub AI Creditsは、名前が似ていますが別の単位です。1クレジット0.01ドルという単価はCopilot Creditsの話で、GitHub側の含みクレジット1,900や3,900にそのまま掛け算はできません。社内で費用を見積もるときは、どちらの通貨の話をしているのかを先に揃えてください。

二階建ては珍しくない──Claudeの価格表にも同じ構えがある

定額と従量を組み合わせる形は、Microsoftが発明したものではない。Claudeの公式価格ページを開くと、同じ構えがはっきり書いてある。Teamは年払いで1席あたり月20ドル(月払い25ドル)、上位のプレミアム席は年払い100ドル(月払い125ドル)。そしてEnterpriseの説明は「席の料金+APIレートでの従量」で、費用はモデルと作業内容で変わるとされている。有料プランでは上限に達したあと、標準のAPIレートで使える追加のクレジットを有効にできるとも書かれている。

つまり争点は「メーターがあるか」ではない。メーターが回り始める位置がどこかである。Microsoftはその位置を「人に任せる仕事の手前」に置いた。Anthropicは席の外側、API単価との地続きの場所に置いている。どちらが安いかは、あなたのチームがその線のどちら側でどれだけ時間を使うかで裏返る。

01
定額が向く使い方

要約、下書き、議事録の整形、資料の読み込みといった、毎日少しずつ使う仕事。人数が多く、1人あたりの量が読みやすいほど定額の側が有利になる。

02
従量が向く使い方

半日走らせる調査、監督なしのワークフロー、エージェントに任せる業務プロセス。使う人が限られ、月ごとの波が大きい仕事は、席を増やすより従量のほうが読みやすい。

03
比較が難しくなる理由

定額に含まれる範囲が各社で違うので、席の月額だけを並べても比べたことにならない。同じ仕事を両方で走らせて、月末の合計で比べるしかない。

Microsoftは今回、自社の試算も添えている。40種類のプロンプトを各10回ずつ流し、日常利用者と上級利用者の2つの像でCopilot・Claude・ChatGPTの費用を比べたという注記だ。Copilot側はAutoとCowork、Claude側はOpus 5、ChatGPT側はGPT-5.6 Solを使ったとされている。ただしこれはMicrosoftが自社で設計して自社で実施した比較で、第三者による検証は出ていない。※観測として扱うのが妥当だろう。

管理者と利用者が、いま見ておく3か所

A
管理者:支出ポリシーの既定値

Microsoft 365管理センターのコスト管理から、テナント・グループ・ユーザーの上限と通知を設定する。新しく対象になるサービスを自動で取り込む設定が既定で入っているので、勝手に増やしたくない場合はここを切る。対象はCoworkとWork IQ APIに加えてCodeとManaged Runtimeへ広がり、Copilot Studioのエージェントは10月に加わるとされている。

B
利用者:上限に当たった先の分岐

定額の上限に当たっても作業が止まるわけではない。警告のあと、Autoに切り替えて追加費用なしで続けるか、クレジットに移るかを選ぶ。Cowork内では自分が使ったクレジット数と残り、履歴を見られる。どちらを選んだかで請求が変わるので、押す前に読む。

C
開発チーム:9月の枠で1か月回した結果

GitHub Copilotの含みクレジットは9月1日に標準へ戻っている。9月分の請求は、縮んだ枠で丸1か月回した最初の数字になる。超過が出ているなら、席の等級を上げるのと従量で払うのと、どちらが安いかを実額で比べられる。

💡 見積もりの順番
先に席数を決めてから従量分を足すと、たいてい過大になります。逆から積んでください。まず「人に任せる仕事」を月に何件走らせるかを数え、Microsoftの見積もりツールでクレジット数を出し、従量メーターで買う前提なら0.01ドルを掛ける。そのうえで、残りの全員分を定額で持つといくらかを足す。この順番なら、従量側が膨らんだときにどの作業が原因かをすぐ指させます。

編集部の見立て

Editor's Opinion

今回の発表で目を引くのは、値段そのものよりも「サチュレーション」という言葉のほうだと考えます。より賢いモデルを当てても結果が変わらない仕事があり、そこには固定価格で足りる。逆に言えば、モデルの性能差が結果に出る仕事だけが、これから値段の変動にさらされるという宣言でもあります。AIの値下げ競争がずっと続いてきたなかで、下がる対象と下がらない対象を会社側が線引きし始めた、と読むこともできます。

読者にとっての意味は、費用の管理が「いくらのプランを選ぶか」から「どの仕事をどちら側に置くか」へ移ることです。これまでは席の値段を比べれば済みました。これからは、同じチームの中に定額で回る仕事と従量で回る仕事が混ざります。切り分けができていれば、任せる仕事だけを従量で買えます。できていないと、全員分の席を上の等級に上げる方向へ流れます。

もうひとつ、「一部のベンダーは日常のAIの仕事までメーターに載せる」という一文には、自社のGitHub Copilotがそのまま当てはまるように見えます。ただ、これは矛盾というより線の位置の違いでしょう。開発の仕事はMicrosoftの定義では最初から「任せるAI」の側にあり、だからこそ6月から従量へ移り、9月に枠が縮みました。批判として読むより、自分の仕事がどちら側に分類されているかを確かめる手がかりとして読むほうが実用的だと思います。

そのうえで、今回の説明にはまだ数字の空白があります。Coworkの1タスクが何クレジットになるのかは、公式の資料でも「おおまかな計画用の目安」と断られており、実際の作業ごとの単価は開いてみないと分かりません。定額の上限が具体的に何回・何時間なのかも、製品ごとに順次示されていく段階です。値付けの骨格は出ましたが、請求書の金額を先に計算できる状態にはまだなっていません。

まとめ

Microsoftが2026年9月25日、Copilotの料金モデルを「1人あたり定額」と「クレジットの従量課金」の二階建てにすると公式ブログで説明しました。定額側に入るのはCopilot Chat、Office各アプリのCopilot、Researcher / Analyst / Facilitator、Work IQによる情報の取り込み、そしてモデルの選択です。GPT-5.6とSonnet 5は込み、Opus 5は上限付きで込みとされています。

従量側へ回るのはCowork、Code、Autopilot、SharePointの高度な機能、FableやAstraといったフロンティアモデルです。単価は1クレジット0.01ドルで、1年前払いの事前購入プランでは30万クレジットの5%から3億クレジットの20%まで9段階の割引が付きます。企業向けでは、管理者が支出ポリシーを作るまで従量課金の機能は動かず、請求も発生しません。

値札そのものは動いていません。企業向けMicrosoft 365 Copilotは年払いで1人あたり月30.00ドル、中小企業向けの追加ライセンスは年払い21.00ドル(2026年12月31日までは18.00ドル)のままです。一方で同じMicrosoft傘下のGitHub Copilotは、月19ドルのBusinessで1,900クレジット、月39ドルのEnterpriseで3,900クレジットという枠の中にあり、9月1日に優遇枠が終わったばかりです。

Claudeの価格表を開くと、Enterpriseは「席の料金+APIレートでの従量」と書かれています。二階建て自体はもう業界の共通形で、違うのは階段の位置のほうです。

線がもう一度動くのは10月です。Copilot Studioで作ったエージェントが費用管理の対象に加わると予告されており、そこで「任せるAI」の範囲がまた一段広がります。