中国のAI企業MiniMaxが10月19日、新モデル「MiniMax M3.1 Flash」を公開した。API(プログラムからモデルを呼び出す窓口)での料金は、100万トークンあたり入力0.15ドル・出力0.60ドル。トークンとは、AIが文章を処理するときの最小の単位である。
第三者の評価機関 Artificial Analysis は、このモデルの知能指数を42と測った。指数とは、複数のテストの成績を合算して一本の数字にしたものだ。1回の測定にかかった費用は1タスクあたり0.22ドルで、同じ機関が測った Claude Opus 5.5(max設定)の5.98ドルと比べると、約27分の1にとどまる。
ただし同じ機関は、このモデルの幻覚率を93%と報告している。安さと間違え方の両方を見て初めて、使い道が決まる。
MiniMax M3.1 Flashとは──何が出て、いくらか
M3.1 Flashは、MiniMaxの「M3」の後継にあたる軽量モデルだ。推論(答えを出す前に考える工程)を常に行う設計で、扱える文章の長さは100万トークン。MiniMaxのAPI、定額プラン「M Plan」、同社のコーディング用アプリ「MiniMax Code」で、公開日から使える。
料金は、プロンプトの長さによらず一律である。前作のM3は入力が51万2,000トークンを超えると単価が倍になる段階制だったが、M3.1 Flashにはその段差がない。
| モデル(100万トークンあたり) | 入力 | 出力 | キャッシュ読み出し |
|---|---|---|---|
| M3.1 Flash(全長一律) | 0.15ドル | 0.60ドル | 0.015ドル |
| M3(入力51万2,000トークン以下) | 0.30ドル | 1.20ドル | 0.06ドル |
| M3(入力51万2,000トークン超) | 0.60ドル | 2.40ドル | 0.12ドル |
キャッシュ読み出しとは、同じ前置きの文章を繰り返し送るときに、2回目以降の入力を安く処理する仕組みだ。長い指示書を毎回付けるエージェント型の使い方では、この欄の単価が請求額を左右する。
モデルの重み(学習結果のデータ本体)は、公開時点では出ていない。公式ブログは「後日」とだけ書き、MiniMaxのXの告知は10月23日と伝えられている。ライセンス(使用許諾)の条件はまだ示されていない。
単価と「1タスクの費用」は別の数字
安さを見るとき、100万トークンあたりの単価だけでは足りない。AIは考える過程でも出力トークンを使うので、よく喋るモデルは、単価が低くても請求額が膨らむ。Artificial Analysisが公表する「指数を1回測るのにかかった費用」は、この影響まで含んだ実費である。
M3.1 Flashは0.22ドル。前作M3の0.51ドルから約57%下がった。MiniMaxは公式ブログで「エージェント作業の総費用が前作より70%低い」と述べているが、測り方と対象の仕事は明かされていない。第三者の測定で確かめられた下げ幅は57%のほうだ。
競合との位置は次のとおり。DeepSeek V4.1 Flash 1017(10月18日の記事で扱った)は指数45で費用0.26ドル、M3.1 Flashを指数で3点上回る。Claude Opus 5.5はhigh設定で指数54・1.82ドル、max設定で指数58・5.98ドルだった。
幻覚率93%は何を測った数字か
幻覚(ハルシネーション)とは、AIが事実と違うことをもっともらしく答える現象を指す。Artificial Analysisの事実知識テスト「AA-Omniscience」で、M3.1 Flashの幻覚率は93%と報告された。
この数字の読み方には注意がいる。93%は「全回答のうち93%が誤り」ではない。正解できなかった質問のうち、答えを拒まず間違った答えを返した割合である。同じテストで、M3.1 Flashの正答率は56%、DeepSeek V4.1 Flash 1017は43%だった。正答率だけ見れば、M3.1 Flashのほうが上だ。
つまり、このモデルは知らないことでも「分かりません」と言わずに答えにいく。正解する質問も多いが、外したときに誤りが表に出にくい。出典の確認を挟めない仕事、たとえば固有名詞や数字を含む文章の下書きを任せる場面では、この癖が実害に直結する。
発表側の数字と第三者の数字
M3.1 Flashについて出ている数字は、MiniMaxが自分で公表したものと、独立機関が測ったものが混ざっている。ベンチマーク(性能試験)の実施条件が示されていないものもあり、並べて読むときは出所を分けておきたい。
| 項目 | MiniMaxの発表 | 第三者の測定 |
|---|---|---|
| 知能指数 | (公表なし) | 42(Artificial Analysis) |
| コード修正の試験 DeepSWE v1.1 | 73.7% | (確認できず) |
| 金融業務の試験 BankerToolBench | 76.2(Claude Opus 5と同点と説明) | (確認できず) |
| 出力速度 | 中央値で毎秒170トークン超 | 毎秒約105トークン(Artificial Analysis掲載値) |
| エージェント作業の総費用 | 前作より70%低い(測り方の説明なし) | 指数の実行費用で約57%低い |
| 幻覚率 | (公表なし) | 93%(AA-Omniscience) |
速度の食い違いは、測る条件の差が混ざっている可能性がある。発表値の毎秒170トークン超に対し、掲載値は約105トークンで、同じクラスの中央値(毎秒約114トークン)をやや下回る。MiniMaxの数字は、少なくとも日常の使い方でそのまま再現できるとは限らない。
MiniMax M3.1 Flashの使いどころと避けどころ
M3.1 FlashはChatGPTやClaudeのような一般向けアプリではなく、開発者向けのAPIと、MiniMax自身のアプリで使うモデルだ。読者の立場ごとに、関わり方を整理する。
月額プランの中身はこの発表で動いていない。M3.1 Flashを使うには、MiniMaxのAPIかアプリに別途登録することになる。
分類・要約・整形のように、結果をあとから機械的に検査できる仕事は相性がよい。指数の実行費用はOpus 5.5の約8分の1(high設定)から約27分の1(max設定)で、全長一律の単価なので、長い資料を丸ごと渡す設計でも計算が崩れにくい。
数字・固有名詞・法令の引用を含む文章は、幻覚率93%の癖が最も出る領域だ。使うなら出典の突き合わせを人かほかのモデルで挟む前提にする。
編集部の見立て
今回の発表で注目したのは、単価の低さよりも、1タスクの費用と正答率の組み合わせが分かれて見えてきた点です。0.22ドルは確かに安い数字ですが、同じ機関が同時に93%という幻覚率を示しました。安さと誤答の出方は、別々に確かめないと全体像になりません。
もう一点、MiniMax自身の発表値と第三者の測定値がずれている項目があります。費用の下げ幅は70%対57%、速度は毎秒170トークン超対約105トークンです。どちらかが誤りだと断じるつもりはありません。ただ、発表資料の数字は測定条件が明かされないまま並ぶことが多く、比較に使うときは第三者が測った数字を軸に置くのが堅実だと考えます。
この価格帯には、10月18日の記事で扱ったDeepSeekの更新に続いて、別の会社が同水準の値札で加わった格好です。値札の競争は続いていますが、今回のように指数・費用・誤答傾向が同時に公開される場面では、値札だけで比べないほうが結果として安くつくと見ています。
まとめ
MiniMaxは2026年10月19日にM3.1 Flashを公開しました。料金は100万トークンあたり入力0.15ドル・出力0.60ドル、キャッシュ入力0.015ドルで、プロンプトの長さによらず一律です。
Artificial Analysisの測定では、知能指数は42、1タスクの費用は0.22ドルでした。Claude Opus 5.5(max)の5.98ドルの約27分の1ですが、指数は16点低くなります。DeepSeek V4.1 Flash 1017は指数45・0.26ドルです。
同じ機関は、事実知識テストでの幻覚率を93%と報告しています。正答率は56%と高めで、答えられない質問でも答えにいく癖が数字に表れた形です。
発表側の「総費用70%減」「毎秒170トークン超」は、第三者の測定(約57%減、毎秒約105トークン)と開きがあります。比較には第三者の数字を使うのが安全です。
重みの公開は10月23日と伝えられていますが、MiniMaxの公式ブログは日付を示しておらず、ライセンスも未発表です。その日に条件が出るかどうかが、自社環境で動かせるモデルとして扱えるかを分けます。