テキサス州のケン・パクストン司法長官が2026年10月23日、ChatGPTを運営するOpenAIと、CEOのサム・アルトマン氏を提訴した。報道によれば、訴えを受け付けたのはテキサス州コリン郡の地方裁判所である。
主張の中心は、ChatGPTを「安全で信頼できる」と宣伝しながら、利用者に及ぶ危険を十分に伝えていなかったという点にある。さらに州側は、未成年者によるChatGPTの利用を遮断することと、新しいモデルを出す前に、裁判所が認めた第三者の評価者の承認を得させることを求めている。
これらはすべて州側の主張と要求で、裁判所はまだ何も判断していない。10月14日の8州による提訴に続く動きだが、中身には違いがある。この記事は、何が訴えられ、前回の提訴と何が違い、AIを選ぶ側は何を確かめておけばよいのかを整理する。
金曜日に出た、テキサス州の訴え
被告は、OpenAIの運営会社群とアルトマン氏個人である。法人だけでなくCEOを名指しする形は、6月1日に全米で初めてOpenAIを提訴したフロリダ州と同じだ。フロリダ州は、その後の9月末に仮差止めも申し立てており、経緯は別の記事で整理している。
州の動きとしては、フロリダ州、10月14日の8州に続く3つ目の流れになる。今回のテキサス州は、そのどちらの訴えにも入っていない。別の州が、別の裁判所に、自前の訴状を出した形だ。
訴えの中身と、裁判所に求めていること
州側の主張は、司法長官室の発表と報道を重ねると次の3つにまとまる。
テキサス州の消費者保護法(不当商取引法)に基づく訴えだ。ChatGPTを安全で信頼できる道具として売り込みながら、不正確な情報や有害な出力が出うることを利用者に十分伝えていない、というのが骨格になっている。
発表文が挙げたのは、銃乱射の犯人が支援を受けたこと、脆弱な人が自殺へ誘導されたこと、専門職の人が公の場で恥をかかされたこと、利用者の批判的思考力が落ちたこと、未成年が依存させられ、保護者の関与なしにデータを集められていることなど。州側はこれらを、AI開発競争に勝とうとする姿勢の結果だと位置づけている。
複数の報道は、未成年を守るためのテキサス州のSCOPE法にも基づいていると伝える。年齢確認が必要なのにChatGPTには無かった、という主張だ。ただしTexas Tribuneの記事は根拠法の名前を書いておらず、法律名は報道ごとに濃淡がある。
求めている救済も、金銭より行為の差止めに重心がある。報道によれば州は、未成年者によるサービスの利用を遮断する命令と、新しいモデルについて、裁判所が認めた評価者が安全対策を審査し承認するまで州内の利用者に届けさせない命令を求めている。ほかにもいくつかの制限が含まれるという。
後者は、すでに出ているモデルの使い方ではなく、今後のモデルの出し方そのものに裁判所が関わる要求だ。通ればテキサスの利用者だけでなく、OpenAIの新モデルの公開手順に影響が及びうる。もちろん、それは認められた場合の話である。
フロリダ・8州と比べて何が違うのか
これまでの州の動きを並べると、今回の位置づけが見える。
| 提訴 | 日付 | 被告 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| フロリダ州 | 2026年6月1日 | OpenAIとアルトマン氏 | 州として全米初。CEOを個人でも被告にした。9月28日に仮差止めを申立て |
| 8州(アリゾナほか) | 2026年10月14日 | OpenAI | 各州が別々の州裁判所に提訴。ChatGPTを子どもに安全と説明した点が争点 |
| テキサス州 | 2026年10月23日 | OpenAIとアルトマン氏 | コリン郡の裁判所。未成年の利用遮断と、新モデルの第三者承認を求める |
目立つ違いは2つある。1つ目はアルトマン氏個人を被告にしていることで、8州の訴えにはなかった要素をフロリダ州と共有している。会社の責任と、経営者が公に語った言葉の責任を、分けて問う構えだ。
2つ目は、求めているものの範囲である。8州が主に求めたのは、ChatGPTの未成年に対する挙動の変更や、不当と主張する安全の説明の差止めだった。今回のテキサス州は、利用そのものの遮断と、新モデルの事前審査を挙げている。同じ種類の要求は、フロリダ州が9月28日の仮差止めの申立てでも出していた。テキサス州はその型を、訴えの本体に据えた形になる。
OpenAIの反応と、まだ決まっていないこと
Texas Tribuneによれば、OpenAIの広報担当者は、専門家と協力してリスクを減らし、追加の安全対策を築いてきたと説明した。あわせて、テキサス州や他の州と協力して、AI業界全体に当てはまる現実的な政策を進めたいという考えを示している。訴えの個別の主張に対する反論は、報道の時点では出ていない。
10月14日の8州の提訴のときも、同社は完全な仕組みは存在しないとしたうえで、保護者向けの管理機能や休憩を促す通知、年齢に応じたモデルの保護をすでに導入していると述べていた。今回の反応も同じ方向にある。
使う側が確かめること
訴えが出た段階で、使っている人の画面は何も変わらない。それでも、立場によって確認できる点は違う。
お子さんが自分のアカウントで使っているなら、登録している年齢と、保護者向けの管理機能の設定を一度開いて確かめたい。OpenAIが「すでに導入した」と説明している機能は、どこまで有効にしているかを自分の目で確かめておく価値がある。
授業や課題で生徒にChatGPTを使わせているなら、サービス側が定める利用可能な年齢と、実際に使わせている学年が合っているかを見直す対象になる。州の主張が通るかとは別に、規約と現場のずれは今のうちに確認できる。
ChatGPTのAPIを自社の画面に組み込み、未成年が触れうる形で出しているなら、年齢確認の有無と、保護者の関与なしにデータを集めていないかを洗い出しておく。州の訴えが問題にしているのは、この2点に近い。
編集部の見立て
今回の訴えで重く見ているのは、被害の件数ではなく、責められているのが「何を言って売ったか」である点です。州が争うのは、ChatGPTが危険だったかどうかより先に、安全だと説明した言葉が事実に合っていたかどうかです。この組み立ては、どの対話AIの提供元にも向けられうるものです。
もう1つは、新モデルの事前承認という要求です。フロリダ州が9月28日に先に出した型で、2つの州が同じ要求を並べたことで、一州だけの特殊な主張とは言いにくくなりました。認められる見込みはまだ読めませんし、1つの州の裁判所が全国向けの公開手順を左右する形になるのかも不透明です。ただ、モデルの出し方を外から審査する発想が、複数の訴状に載る段階に来たことは確かです。
読者にとっての実務的な意味は、はっきりしています。当面ChatGPTの使い心地が変わるわけではありません。一方で、子どもが関わる場面や、サービスに組み込む場面では、提供元の説明をそのまま信じるのではなく、設定画面と規約を自分で開いて確かめる習慣が、これまで以上に必要になっていると考えます。
まとめ
2026年10月23日、テキサス州のパクストン司法長官が、OpenAIとアルトマンCEOをコリン郡の裁判所に提訴しました。ChatGPTを安全で信頼できると宣伝しながら、危険を十分に開示していなかったという主張です。
州は、未成年者の利用の遮断と、新モデルを出す前の第三者による承認を求めています。フロリダ州、10月14日の8州に続く動きです。8州の訴えと違ってアルトマン氏個人を被告にしており、求める範囲も広く、後者はフロリダ州の申立てと同じ型です。
裁判所の判断はまだ何も出ておらず、ChatGPTの提供条件が変わったという発表もありません。OpenAIは安全対策を築いてきたと説明しています。家庭では年齢設定と保護者向け機能を、事業者では未成年の利用を、それぞれ確かめておくことができます。
差止めの申立てが出るのか、出るならいつ審理されるのか。その日付が決まって初めて、テキサスの利用者にとっての実際の影響が測れる。