Anthropic が9月28日(米国時間)、中位モデルの新版「Claude Sonnet 5.5」を公開した。前の版であるSonnet 5から出力の速さは3割以上上がり、同じ仕事にかかる費用は最大3割下がるという。
ただし、値札は動いていない。100万トークンあたりの料金は入力2ドル・出力10ドルのままだ。安くなったのは単価ではなく、同じ仕事を終えるまでに使うトークンと道具の呼び出し回数のほうである。
上位のOpus 5.5とは、複数のベンチマークで差が数ポイントまで縮まった。それでいて単価は半分。中位モデルが「上位の代わり」として現実味を帯びてきた、という話になる。
Claude Sonnet 5.5の料金は?──単価は動かず、変わったのは別の数字
Sonnetは、Claudeの3階層のうち真ん中に当たる。最小のHaiku、最上位のOpusに挟まれた「普段使い」の位置づけで、Anthropicは今回のSonnet 5.5を、コーディングや資料づくりを含む日常業務向けと位置づけている。トークンとは、AIが文章を処理する単位のことだ。
料金は前の版と同じだ。Sonnet 5は6月の公開時に入力2ドル・出力10ドルの導入価格で始まり、8月にこの価格が恒久化された(経緯はAnthropicの上場を扱った記事で触れている)。Sonnet 5.5もそこを引き継いだ形になる。
| 100万トークンあたり | Sonnet 5.5 | Opus 5.5 | Opusとの比 |
|---|---|---|---|
| 入力 | 2.00ドル | 4.00ドル | 半額 |
| 出力 | 10.00ドル | 20.00ドル | 半額 |
| キャッシュ読み出し | 0.10ドル(10月に0.20ドルから値下げ) | 0.20ドル | 半額(公開時は同額) |
| キャッシュ書き込み | 2.50ドル | 5.00ドル | 半額 |
「1回の仕事」で見ると、何が減ったのか
単価が同じなのに費用が下がる仕組みは単純で、使うトークンが減るからだ。回りくどい試行が減り、道具の呼び出しも減る。Anthropicが並べた顧客の報告を見ると、その中身がわかる。
Balyasny Asset Managementは、金融の仕事で1回の回答に使うトークンが、Sonnet 5の約49.7万から約12.1万に減ったと報告した。約4分の1だ。Boxは、Sonnet 5.5が「より正確で、2.4倍速く、合計トークンは12%少なかった」と述べている。Zendeskはチケット処理が20%速くなったと語った。
数字の幅が大きいのは、仕事の種類で減り方が違うからだと読める。4分の1という数字は、あくまで1社の金融タスクでの報告だ。Boxの12%減のほうが、多くの人の実感に近い可能性がある。どちらもAnthropicが選んで載せた事例である点は割り引いて見たい。
Sonnet 5.5とOpus 5.5の違い──ほぼ並んだ点と、残った差
上位のOpus 5.5は9月22日に出たばかりだ(価格と独立測定の結果は前回の記事で整理した)。その6日後に、単価が半分のSonnetが追いついてきたことになる。Anthropicが公表した比較を、Sonnet 5.5とOpus 5.5に絞って並べる。
| ベンチマーク | Sonnet 5.5 | Opus 5.5 | 差 |
|---|---|---|---|
| GDPval-AA(業務タスクのElo) | 1844 | 1846 | 2点差 |
| Terminal-Bench 4.0(端末操作) | 70.6% | 66.4% | Sonnetが上 |
| OSWorld 2.1(PC操作) | 80.1%(部分評価) | 81.8%(部分評価) | 1.7ポイント差 |
| CursorBench 4.0(コーディング) | 55.5% | 57.8% | 2.3ポイント差 |
| Humanity's Last Exam(ツールあり) | 64.5% | 67.7% | 3.2ポイント差 |
| FrontierCode 1.1(難度の高い開発) | 46.2% | 54.4% | 8.2ポイント差 |
業務タスク(GDPval-AA)はほぼ同点、端末操作(Terminal-Bench)ではSonnetが上回った。一方で、難度の高い開発を測るFrontierCodeでは8.2ポイントの差が残っている。日常業務ではほぼ並び、難しい開発ではまだ開きがあるという形だ。
機能追加、バグ修正、資料や表計算の作成。GDPvalやCursorBenchの近さから、Sonnet 5.5を第一候補にしやすい領域。
FrontierCodeの差が残る領域。顧客のCreatorも「Opus 5.5が設計を決め、Sonnet 5.5が実装する」使い分けに前向きな趣旨を述べている。
単価が半分で、しかもトークンが減る組み合わせは、数が増えるほど請求額に響く。ここが最も差の出る領域。
どこで使えるか──Copilotは即日、Cursorも公式ドキュメントに掲載
入口は複数ある。Anthropic自身のClaude Platform(モデル名は claude-sonnet-5-5)とClaudeアプリ、それにAmazon・Google・Microsoftの各クラウドで提供される。Claude Codeでも同日から使え、既定の努力度は「Medium」だ。
GitHub Copilotでは、発表と同じ9月28日に一般提供が始まった。対象はPro、Pro+、Max、Business、Enterpriseの各プランで、VS Code、Visual Studio、JetBrains、Xcode、Eclipse、Copilot CLI、github.comなどのモデル選択画面から選べる。GitHubは「Sonnet 5と同等のコーディング結果を、大幅に少ない手数・トークン・道具呼び出しで出した」と説明している。展開は段階的で、まだ表示されない環境もありうる。
Cursorは、公式ドキュメントにSonnet 5.5のページがある。設定の「Models」からモデル選択画面に追加でき、料金は入力2ドル・出力10ドルでSonnet 5と同じ、最大100万トークンの文脈と思考モードに対応するという。ただしこのページに日付はなく、Cursorの変更履歴に同日の告知は見当たらなかった。提供開始日は確認できていない。
もうひとつ、次の予告がある。最小のHaiku 5.5が「今後数週間のうちに」加わるとAnthropicは述べた。価格と日付はまだ出ていない。
編集部の見立て
今回の発表で注目したいのは、値下げではなく「1回あたり」で競う軸に話が移っていることです。6日前のGPT-6 Sol・Lunaは単価を半分にして出てきました(価格戦争の記事を参照)。今回のAnthropicは単価に手を付けず、仕事に要するトークンで差を付けています。同じ「安さ」でも、料金表を見るだけでは比べられない形になりました。
読者にとっては、比較の単位を変える必要が出てきます。これまでは100万トークンの単価で並べれば足りました。これからは、自分の仕事を1件流したときの合計トークンと所要時間で見る必要があります。単価が半分のモデルでも、3倍のトークンを使えば得にはなりません。逆に、単価が同じでも使う量が4分の1になれば、請求額は大きく変わります。
ただし、今回の根拠はAnthropicが選んで載せた事例です。4分の1という数字も1社の金融タスクの話で、あなたの仕事で同じ比率が出る保証はありません。手元の仕事を20〜30件、Sonnet 5.5とこれまで使っていたモデルで流し、使ったトークン数と結果の質を並べてみるのが、いちばん手早い確認になります。
まとめ
2026年9月28日、AnthropicがClaude Sonnet 5.5を公開しました。料金は入力2ドル・出力10ドルでSonnet 5から据え置きです。出力は30%以上速くなり、同じ仕事の費用は最大30%下がるとされています。安くなった理由は単価ではなく、使うトークンと道具呼び出しの減少です。
単価はOpus 5.5(入力4ドル・出力20ドル)の半分で、業務タスクのGDPval-AAでは1844対1846とほぼ同点です。ただし難度の高い開発を測るFrontierCodeでは46.2%対54.4%と8.2ポイントの差が残っています。
GitHub Copilotでは同日に一般提供が始まりました。Cursorは公式ドキュメントに掲載されていますが、提供開始日は確認できていません。数字は主にAnthropicが公表した測定と顧客の報告で、条件をそろえた第三者の検証はまだありません。
次に確認したいのは、まもなく出るHaiku 5.5の価格と、Sonnet 5.5の単価据え置きが続くかどうかだ。Opus 5.5とSonnet 5.5の間には、いま入力で2ドルの差がある。