Cursor のエンタープライズ向けプランには、モデルを自動で選ぶ「Auto」だけに適用される特別な値付けが残っていた。どのモデルに振られても、100万トークンあたりの単価が変わらないという定額である。入力1.25ドル、出力6.00ドル。使われたのがどこの何というモデルであっても、請求はこの数字で立っていた。
その扱いが、2026年9月7日で終わる。Cursorの公式ドキュメントは、この定額の適用範囲を「Until September 7, 2026」と書いている。以後のAutoは、その要求が実際に振り分けられたモデルの定価で課金される。
数字の上では、これは値上げでも値下げでもない。値段が固定から変動に変わるという話である。だから請求額は、使う人の操作ではなく、振り分け側の判断で動くようになる。そして振り分け先の出力単価は、いちばん安いモデルといちばん高いモデルで20倍の開きがある。
「Auto定額」の中身──9月7日で何が終わるのか
CursorのAutoは、要求ごとに使うモデルを自動で選ぶ機能である。裏側で動いているのは「Cursor Router」という振り分けの仕組みで、TeamsプランとEnterpriseプランでのみ使える。個人向けのProなどには提供されていない。
このAutoに対して、Enterpriseだけにはモデルによらない定額のトークン単価が置かれていた。公式ドキュメントに残っている記述はこうだ。
Until September 7, 2026, Enterprise Auto Cost pricing is set per million tokens, regardless of which model is used ($1.25/1M input and cache write, $0.25/1M cache read, $6.00/1M output).
訳すと、2026年9月7日まで、EnterpriseのAuto Cost(コスト優先モード)の価格は、どのモデルが使われるかにかかわらず100万トークンあたりで固定される、という意味になる。内訳は入力とキャッシュ書き込みが1.25ドル、キャッシュ読み出しが0.25ドル、出力が6.00ドルだ。
Teams向けの料金表では、この定額は「Legacy Enterprise Auto」という1行のモデルとして掲載されており、提供元の欄には「Cursor」と書かれている。実質的には、中身が入れ替わる仮想のモデルが1つ、固定価格で売られていたということになる。
| 100万トークンあたり | 9月7日まで(Legacy Enterprise Auto) | 移行後のAuto |
|---|---|---|
| 入力 | 1.25ドル(モデル不問) | 振り分け先モデルの定価 |
| キャッシュ書き込み | 1.25ドル(モデル不問) | 振り分け先モデルの定価 |
| キャッシュ読み出し | 0.25ドル(モデル不問) | 振り分け先モデルの定価 |
| 出力 | 6.00ドル(モデル不問) | 振り分け先モデルの定価 |
| 第三者モデルへの上乗せ | 提供元は「Cursor」と表記 | Cursor Token Rate 0.25ドル |
Cursor Autoの料金はどう決まるのか──Cost・Balance・Intelligenceの違い
移行後の課金を読むには、まずAutoに3つのモードがあることを押さえておく必要がある。モデル選択欄でAutoを選んだうえで、最適化の方針を選ぶ形だ。
従来のAutoと同じ振り分け方を使い、トークンの支出を抑える方向に寄せる。今回終わる定額が付いていたのは、Enterpriseのこのモードである。
賢さ・速さ・費用の3つの釣り合いを取る。新規ユーザーの既定はこのモードで、公式の説明ではCostよりも利用枠の減りが速い。
難しい仕事ほど上位モデルへ回す。単一のフロンティアモデルを常用するよりは安く済ませる、という位置づけになっている。
そして課金の原則は、公式ドキュメントの一文に集約されている。「すべてのAutoモードは、各要求が振り分けられたモデルの定価で課金される」。9月7日までのEnterprise Auto Costだけが、この原則の外に置かれた例外だった。例外が消えれば、残るのは原則だけになる。
振り分けを決めるのは利用者ではない。公式ドキュメントは、Cursor Routerが要求ごとに分類器を走らせ、作業の種類と複雑さで送り先を選ぶと説明している。どの要求をどのモデルに当てるかは手で指定できず、モデルの顔ぶれも時期によって入れ替わる。利用者が操作できるのは、上の3モードの選択だけである。
振り分け先しだいで20倍──出力単価の地図
では、振り分け先の定価はどれくらい散らばっているのか。公式の料金表から、Autoが実際に選びうる主要なモデルの出力単価を並べてみる。
いちばん安い自社モデルのComposer 2.5が出力2.50ドル、いちばん高い Claude Fable 5.1が50.00ドル。同じ「Autoの1回」でも、振り分け先しだいで出力単価は20倍の幅を持つ。定額だった6.00ドルを基準に置くと、Fable 5.1は約8.3倍、Composer 2.5は半分より安い、という位置関係になる。
間を埋める値も見ておきたい。Claude Sonnet 5は出力10.00ドル、OpenAIのGPT-5.6 Solは20.00ドル、Claude Opus 5は25.00ドル。入力側も、Composer 2.5の0.50ドルからFable 5.1の10.00ドルまで開いている。定額の1.25ドル・6.00ドルという値は、この帯のかなり下のほうに置かれていたことがわかる。
つまり移行の影響は、一方向ではない。軽い作業ばかりで自社モデルに振られていたチームは、9月7日以降のほうが安くなる可能性がある。逆に、重い作業が多く上位モデルに回っていたチームは、同じ使い方のまま請求額が数倍に伸びることがありうる。平均でいくら上がるかは、そのチームの仕事の中身でしか決まらない。
上乗せの0.25ドルと、免除される自社モデル
もう一つ、定価と並んで請求に乗る数字がある。Cursor Token Rateという、100万トークンあたり0.25ドルの上乗せだ。TeamsとEnterpriseの第三者モデル利用にかかり、入力・出力・キャッシュ済みトークンのいずれにも適用される。自分で用意したAPIキーを使う場合も対象になる。
重要なのは、その例外のほうである。公式ドキュメントは「GrokとComposerを含むCursorの自社モデルは、Cursor Token Rateの対象外」と明記している。Autoが第三者モデルに振り分けたときにもこの上乗せは付くので、自社モデルに振られるほど、定価と手数料の両方が軽くなる構造になっている。
Composer 2.5なら出力2.50ドル、Grok 4.6なら6.00ドル。どちらも上乗せの0.25ドルは付かない。定額時代の出力6.00ドルと比べると、同額か、それより安い。
Claude Sonnet 5なら出力10.00ドル、GPT-5.6 Solなら20.00ドル。これに100万トークンあたり0.25ドルが加わる。定額時代より重くなる側である。
データの保管地域を選ぶ設定を有効にすると、対象モデルの料金に10%が上乗せされる。国内保管を要件にしている組織は、ここも合わせて見ておきたい。
この設計は、Cursorが2026年8月14日にSpaceXの傘下へ入った経緯と重ねて読むと像が結ぶ。Grokは買収によって「他社から仕入れるモデル」ではなくなり、いまは自社モデルの側に並んでいる。自社の頭脳を使わせるほど利用者の請求が軽くなり、他社の頭脳を使わせるほど重くなる——価格表がそう組まれている。
他社モデルの側にも動きがある。OpenAIは8月末、SpaceXによる買収を理由にCursorへのモデル提供を終える方針を公表し、停止の提案日として11月12日を挙げた。同社は自らの案としてこの日付を示しており、両社の協議が続いている段階で、確定した期日ではない。OpenAIのモデルがCursorの利用に占める割合は5%前後と伝えられている(※観測)。いずれにせよ、振り分け先の顔ぶれは今後も動く前提で考えたほうがいい。
9月7日以降、Cursorを使うチームが確認すること
影響を受けるのは、Enterpriseプランで、かつAutoのCostモードを使っていたチームである。個人プランや、モデルを手で選んでいるチームの単価は、今回の件では動かない。そのうえで、確認の順番はこうなる。
- そもそもルーターが動いているかを見る。 Enterpriseでは既定でオフです。管理者ダッシュボードの設定を開き、ルーターが有効になっているか、どのモードを選べる設定にしているかを確認してください。
- 振り分け先モデルの表示をオンにする。 既定では隠れています。少なくとも移行後しばらくは表示に切り替えて、実際にどのモデルへ流れているかを目で見てください。
- 次の請求書を、モード別・モデル別に分けて読む。 単価が固定でなくなった以上、合計額だけを見ても増減の理由がわかりません。利用状況のダッシュボードで内訳を出してください。
- 支出の上限を設定する。 チーム単位の月額上限はTeamsとEnterpriseの両方で設定でき、Enterpriseではメンバー個別の上限も使えます。変動制へ移る初月は、上限を置いておくほうが安全です。
座席そのものの料金は今回動いていない。Teamsは標準の席が1人あたり月40ドル、上限が5倍のプレミアム席が120ドルで、Enterpriseは個別見積もりのままだ。動いたのは席の値段ではなく、席の上で走るトークンの値段の決まり方である。
編集部の見立て
今回の変更でいちばん大きいのは、金額そのものではなく予測可能性が下がったことだと考えます。定額のうちは、月末の請求額は使った量だけで決まっていました。これからは、使った量と、そのとき振り分け側が選んだモデルの両方で決まります。片方は自分たちで管理できますが、もう片方はできません。
もっとも、これは意地悪な変更ではないとも思います。定額のAutoは、上位モデルを使ったときの差額を提供側が負担する仕組みでもありました。無理のある値付けは、いずれ「安いモデルにしか振り分けない」という形で品質のほうに跳ね返ります。実費に戻すのは、長い目で見れば筋が通った整理です。
気になるのは、費用の軽い選択肢が自社モデルに寄っている点です。自社のGrokとComposerだけが手数料を免除され、しかも振り分けの判断はCursor側が握っています。利用者が納得できる形にするには、どのモデルへ流れたのかを後から数えられることが前提になります。だからこそ、既定で隠れている表示設定を最初に開けておくことを勧めます。
そのうえで、コード支援AIの料金は、この夏から一貫して同じ方向へ動いています。まとめ買いの定額から、実費に手数料を足す形へ。9月1日に優遇クレジットが終わったGitHub Copilotも、構造としては同じ場所に着地しました。定額が続く前提で予算を組んでいるなら、その前提のほうを点検する時期に入っています。
まとめ
Cursorのエンタープライズ向けAutoに適用されてきた定額のトークン単価が、2026年9月7日で終わります。公式ドキュメントの表記は「Until September 7, 2026」で、内訳は入力とキャッシュ書き込みが100万トークンあたり1.25ドル、キャッシュ読み出しが0.25ドル、出力が6.00ドルでした。
移行後は、すべてのAutoモードが「実際に振り分けられたモデルの定価」で課金されます。振り分け先の出力単価は、自社モデルのComposer 2.5が2.50ドル、Claude Fable 5.1が50.00ドルで、幅は20倍。定額だった6.00ドルと比べると、Fable 5.1は約8.3倍にあたります。
第三者モデルには、これとは別に100万トークンあたり0.25ドルのCursor Token Rateが上乗せされます。GrokとComposerを含むCursorの自社モデルは、この上乗せの対象外です。データ保管地域を指定する設定では、対象モデルの料金にさらに10%が加わります。
座席料金は動いていません。Teamsは標準40ドル・プレミアム120ドルのままで、変わったのはトークン単価の決まり方だけです。まず管理画面でルーターの有効・無効と、振り分け先モデルの表示設定を確認してください。
次に単価が動く日付は、もう料金表の中に書いてある。GPT-5.6 Solのプロモーション価格は11月21日まで。OpenAIがCursorへのモデル提供を止める提案日は11月12日。今月の請求書の内訳を一度読んでおけば、その2つの日付が来たときに何が動くのかも、同じ表の上で追える。