Googleが2026年9月15日、対話型の音声AIモデル「Gemini 3.8 Live」と、その上位版「Gemini 3.8 Live Extended Thinking」を発表した。第三者の計測機関Artificial Analysisが算出する音声AI品質指数で、Extended Thinkingは82.6点を記録し、OpenAIの「GPT-Live-1」(81.5点)とxAIの「Grok Voice Think Fast 2.0」(81.3点)を抜いて首位に立った。
しかも、首位を獲得したモデルのほうが安い。Artificial Analysisが実測した1時間あたりの利用コストは、Extended Thinkingが3.50ドル。2位のGPT-Live-1は5.83ドルで、両者には4割の開きがある。性能と価格が反比例するのがこれまでの通例だったが、今回はその通例が崩れた。
Gemini 3.8 Live・Extended Thinkingとは何か
今回発表されたのは2つのモデルだ。Gemini 3.8 Liveは日常会話や音声アシスタント向けの標準モデル、Gemini 3.8 Live Extended Thinkingはより複雑な推論を必要とする場面向けの上位モデルである。どちらも会話を止めずに97の言語を自動で判別・切り替えでき、会話を続けながら裏側でツール呼び出しやAPIリクエストを実行し、視覚情報もほぼリアルタイムで処理できるという。
用途としてGoogleが挙げるのは、新入社員研修での画面を見せながらの質問応答、視覚情報を使ったチェスの対局、手描きのスケッチをその場でReactのコードに変換する作業、複数手順にまたがる予約手続きなどだ。生成した音声にはすべて、AI生成物と判別するための電子透かし「SynthID」が組み込まれている。
| 音声AIモデル | 提供元 | 音声AI品質指数 | 1時間あたりコスト |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.8 Live Extended Thinking | 82.6点首位 | 3.50ドル | |
| GPT-Live-1(Astra, medium) | OpenAI | 81.5点 | 5.83ドル |
| Grok Voice Think Fast 2.0(High) | xAI | 81.3点 | 4.80ドル |
| Gemini 3.8 Live(標準版) | 76.0点 | 0.84ドル |
1時間あたりの料金で比べると、何が起きているか
音声AIの料金は本来、モデルごとに単位も条件もバラバラで比べにくい。GPT-Live-1はOpenAIの音声API単体では1分0.05ドル(1時間換算で3.00ドル)だが、複雑な処理を任せる裏側の推論モデル「Astra」の呼び出し分が別料金で加算される。Artificial Analysisは、この裏側の料金も含めた実際の利用コストを1時間あたりの金額に揃えて算出しており、その結果がGPT-Live-1で5.83ドルになる。
Grok Voice Think Fast 2.0も同じ土俵で比較できる。2026年8月5日にxAIが既定モデルとして切り替えた際の公式価格は1分0.08ドルで、1時間に換算すると4.80ドル。Artificial Analysisの実測値とも一致する。
並べてみると、Extended ThinkingはGPT-Live-1よりおよそ4割安く、Grok Voice Think Fast 2.0よりも3割弱安い。性能で最上位に立ったモデルが、価格でも最上位に立ったという、値付けの通例からすれば逆転した結果になっている。
「雑談がうまい」ではなく「用事を済ませられる」かで比べる
音声AIの実力は、流暢に話せるかどうかだけでは測れない。Artificial Analysisは「τ-Voice」という別の指標も公表している。これは音声AIが航空券の変更や小売店での請求トラブル、通信会社への問い合わせといった実務上の用事を実際に解決できたかを測るベンチマークだ。
3モデル中で最も高いタスク完了率。会話の流暢さだけでなく、用件を最後まで片づける力でも先頭に立った。
Geminiとの差はわずか0.7ポイント。音声AI品質指数での差(1.1点)と近い僅差で、体感できるほどの違いにはなりにくい。
音声AI品質指数では僅差だったのに対し、用事を解決できたかでは上位2モデルに10ポイント以上の差をつけられている。
この開きが示しているのは、「話し方が自然かどうか」と「頼んだことをやり遂げられるかどうか」は別の能力だということだ。Grok Voice Think Fast 2.0は前者ではGPT-Live-1にわずか0.2点差まで迫っているのに、後者では10ポイント以上引き離されている。音声アシスタントを業務に使うつもりなら、聞くべきなのは話し方の滑らかさではなく、この種のタスク完了率のほうになる。
Gemini 3.8 Liveは今どこで使えるのか
開発者向けには両モデルともGemini APIとGoogle AI Studioで今日から使える。企業向けはGemini Enterpriseでのプレビュー提供が始まった。
一般利用者にとって関係が深いのは、Extended Thinkingのほうが先に消費者向け製品へ入ってきた点だ。Geminiアプリの音声対話機能「Gemini Live」、検索の音声機能「Search Live」で使えるほか、Google Workspaceでは Google AI Pro・Ultraプランの契約者がDocsで、Google AI契約者全般がGmailとKeepで利用できる。標準版のGemini 3.8 Liveは、今のところ開発者・企業向けの提供が中心で、一般利用者向けの窓口はExtended Thinkingほど広くない。
編集部の見立て
今回いちばん注目したいのは、82.6点という首位の数字そのものより、その首位が最安値でもあったという組み合わせです。これまでの音声AI競争では、高性能なモデルほど高い料金がつくのが自然な流れでした。GPT-Live-1が9月10日に登場した時点では、その料金体系も含めて新しい音声AIの標準形と受け止められていたはずです。それがわずか5日で、性能と価格の両方を上回るモデルに追い抜かれました。
もう一点気になるのは、会話の滑らかさとタスク完了率の差が、モデルによってこれほど開くという事実です。Grok Voice Think Fast 2.0は雑談の自然さでは僅差につけているのに、実際の用事をこなす力では10ポイント以上離されています。音声AIを選ぶときに見るべき指標は、今後「話し方」から「仕事の完了率」へ比重が移っていくはずです。
価格差についても、慎重に見ておきたい点があります。Artificial Analysisが算出した金額は、あくまで実測ベンチマーク上のコストです。実際の請求額は利用するツールや契約プランによって変わるため、この数字をそのまま自分の請求書に当てはめることはできません。ただし、同じ条件で3社を横に並べて測った数字である以上、相対的な位置関係は参考にする価値があると考えます。
まとめ
2026年9月15日、Googleが音声AIモデル「Gemini 3.8 Live」と上位版「Gemini 3.8 Live Extended Thinking」を発表しました。Artificial Analysisの音声AI品質指数でExtended Thinkingは82.6点を記録し、OpenAIのGPT-Live-1(81.5点)とxAIのGrok Voice Think Fast 2.0(81.3点)を上回って首位に立ちました。
しかも1時間あたりの実測コストは3.50ドルで、2位のGPT-Live-1(5.83ドル)より4割安く、性能と価格の両方でトップに立っています。実務上の用事を解決できるかを測るτ-Voiceでも68.6%で最上位でした。
開発者・企業はGemini APIやGemini Enterpriseですぐに試せます。一般利用者はGeminiアプリの「Gemini Live」や「Search Live」、Google AI Pro・Ultraプラン契約者はWorkspaceのDocsでも使えるようになりました。
次に動きそうなのはGPT-Live-1側の反応だ。登場からわずか5日で首位を奪われた形になったOpenAIが、価格や性能をどう調整してくるかが、この先の見どころになる。