Google DeepMind の新体制トップ、コレイ・カブクチュオール氏が2026年9月23日、米国で開かれたカンファレンス「AI Agenda Live Summit」に登壇し、次期フラッグシップ「Gemini 4」が学習の最終段階にあたる「ポストトレーニング」に入ったと明らかにした。「年内のできるだけ早く」投入したいと述べた一方、具体的な日付は示していない。発言の前日にはClaude Opus 5.5とGPT-6 Sol/Lunaが相次いで投入されたばかりで、選ぶ側にとっては「待つべきか、いま決めるべきか」を考えるうえで無視できないタイミングになっている。
9月23日、登壇して語られたこと
カブクチュオール氏は、2026年8月5日にGoogle DeepMindの日々の運営とGemini開発の指揮をデミス・ハサビス氏から引き継いで以来、初めて公の場でまとまった発言をした。登壇したのは、AI業界の専門媒体The Informationが主催する「AI Agenda Live Summit」というカンファレンスだ。
同氏はここで、Gemini 4が「ポストトレーニング」の初期段階に入ったと明かした。ポストトレーニングとは、大量のデータで基礎能力を仕込む「事前学習(プリトレーニング)」を終えたモデルに対し、応答の癖や安全性、指示への従い方を仕上げていく後半の工程を指す。一般に、この段階に入ったモデルは、公開までの距離が事前学習中のものより近い。
登壇時、同氏は英語で「as soon as possible(できるだけ早く)」という言葉を繰り返し使い、年内の、しかも当初の想定より前倒しでの投入を目指す考えを示した、と9to5Google・The Decoder・Forkastなど複数の海外メディアが伝えている。「まだ具体的な計画を語れる段階ではない」としつつ、社内ではすでにGemini 4を自社のコーディング向けエージェントツール「Antigravity」に組み込み、試験的に使い始めているとも述べている。
Gemini 4はいつ出るのか──「年内のできるだけ早く」の中身
カブクチュオール氏が示した時期の手がかりは、いまのところ2つしかない。ひとつは「2026年末より、much earlier(かなり早く)」という言い回し。もうひとつは、事前学習の開始時期から逆算できる開発のペースだ。
Google DeepMindは2026年7月21日、Gemini 3.6 FlashなどFlash系モデルを発表した記事の中で、「Gemini 4に向けた、これまでで最も野心的な事前学習を開始した」と明かしていた。そこから今回のポストトレーニング入りの発言まで、およそ2ヶ月である。フラッグシップ級のモデル開発として、事前学習から後半工程への移行がこの速さで進むのは早いペースだと、Forkastなど複数の媒体が指摘している。
もっとも、ポストトレーニングに入ったからといって、公開日が決まったわけではない。同氏自身、規模や仕様、価格については一切触れていない。Sundar Pichai氏はアルファベットの第2四半期決算説明会で、Gemini 4を名指しして「非常に野心的」と評し、修正が必要な領域としてコーディングとエージェント型のコーディング作業を挙げていた、と報じられている(※観測)。フォーカスの方向は示されているが、日付はまだ誰も口にしていない。
なぜいまこの発言が出たのか
この発言が出た9月23日は、偶然のタイミングではない。その前日にあたる9月22日には、AnthropicがClaude Opus 5.5を、OpenAIがGPT-6 Sol/Lunaの価格改定をそれぞれ発表しており、Opus 5.5は独立測定で歴代最高点を記録、GPT-6 Sol/Lunaは価格面での攻勢を強めたばかりだった。同じ週に競合2社が動いた直後に、Googleの新トップが公の場に立った格好である。
もうひとつの背景は、Googleが抱えていた足踏みだ。Gemini 3.5 Proは2026年6月の投入目標を外した後、コーディング性能の改善を理由にパートナー向けのテストが続き、公開時期のめどが立たないままになっている。編集部が7月に伝えた通り、この延期は今年に入って三度目だった。フラッグシップの後継が止まっている間に、競合2社は新モデルを相次いで送り出している。
Opus 5.5とGPT-6 Sol/Lunaが立て続けに投入され、「Googleが遅れている」という受け止めが強まりやすい状況が生まれていた。
中位モデルの後継が三度延期され、フラッグシップ級の新型が長く出ていない状態が続いていた。
指揮を引き継いで7週間あまりの新トップにとって、進捗を自分の言葉で語る最初の機会でもあった。
カブクチュオール氏自身、Googleが遅れているという見方があることを認めたうえで、自分のチームへの信頼を語り、「常にフロンティアにいるのは間違いない」という趣旨の発言もしている。時期を明言しないまま前倒しの意欲だけを示したのは、この状況を踏まえた発言と見るのが自然だろう。
新体制8ヶ月の歩み
カブクチュオール氏の体制になってからの経緯を、時系列で整理する。
Gemini 3.5 Proが三度目の延期コーディング性能が社内目標に届かず、6月から数えて三度目の出荷見送りが報じられた。
Gemini 4の事前学習開始を公表Gemini 3.6 Flashなどを発表した記事の中で、「これまでで最も野心的な事前学習」に着手したことを明かした。
指揮系統が交代デミス・ハサビス氏が会長へ退き、CTOだったコレイ・カブクチュオール氏が日々の運営とGemini開発の指揮を引き継いだ。
競合2社が新モデルで攻勢Claude Opus 5.5、GPT-6 Sol/Lunaの価格改定が同じ週に相次いだ。
カブクチュオール体制、初の公の場AI Agenda Live Summitに登壇し、Gemini 4がポストトレーニングに入ったこと、年内前倒しでの投入を目指す考えを明かした。
AGIより「信頼できるエージェント」という物差し
今回の登壇で、開発時期の話と並んで注目されたのが、カブクチュオール氏のAGI(汎用人工知能)に対する距離の取り方だ。前任のハサビス氏は「AGIの実現」を組織の旗印として語ることが多かったが、同氏の語り口はそれとは異なる。
「AGIに到達したかどうかという議論は、正しい問いではない」という趣旨の発言をしたと、The Decoderなど複数のメディアが伝えている。かわりに同氏が持ち出したのは、「信頼できるインテリジェントなエージェントを作れているかどうか」という物差しだ。特定のスコアを超えれば到達したと言えるような単一のテストは存在せず、実際の利用を通じて信頼を積み上げていく過程として進捗をとらえる、という立場だという。
この違いは、単なる言葉選びの問題ではない。エージェント機能――ブラウザやファイルを操作させたり、複数の作業を自律的にこなさせたりする機能――が各社の目玉になっているいま、「知能そのものの高さ」ではなく「まかせて壊れないか」を基準に置く語り方は、Gemini 4の開発方針そのものにも表れている可能性がある。実際、同氏はコーディングと自律的なエージェント作業を、Gemini 4が特に手を入れている領域として挙げている、と伝えられている(※観測)。
Geminiを待つか、いま選ぶか
発売日が示されていない以上、「Gemini 4を待つ」という選択肢は、現時点では期限のない待機になる。年内という言葉はあるが、Gemini 3.5 Proが三度延びた実績を踏まえれば、同じ社内での見通しがそのまま実現する保証はない。
仕事や制作で日常的にAIを使っているなら、今動いているモデルで用が足りるかどうかで判断すればよい。Opus 5.5やGPT-6シリーズはすでに使える状態にある。
検索やWorkspace、GitHub CopilotやCursorでGeminiを選んで使っている人は、乗り換えの判断を急ぐ必要はない。年内の発表があるかどうかだけ、頭の片隅に置いておけばよい。
カレンダーに書き写せるのは「9月23日にこの発言があった」という事実までで、発売日そのものはまだ存在しない。次に確認すべきは、具体的な日付や仕様が示される次の発表である。
編集部の見立て
今回の発言でいちばん興味深いのは、Google自身が「遅れている」という受け止めを否定しなかった点だと考えます。新しいトップが最初の公の場で、進捗を誇るのではなく、チームへの信頼を語る形で応答したのは、率直な立ち位置の取り方だと感じました。
一方で、「年内のできるだけ早く」という言葉には、まだ何の拘束力もありません。Gemini 3.5 Proが三度延びた経緯を思えば、期待値を上げすぎるのは禁物です。ポストトレーニングという工程名が出たことは、Gemini 4が開発の後半に差し掛かった証拠にはなりますが、それ以上でも以下でもないというのが、率直な評価です。
もう一点気になったのは、AGIという言葉から距離を取り、「信頼できるエージェント」という物差しに置き換えた語り口です。各社がエージェント機能を競う局面で、これは単なる方針の言い換えではなく、Gemini 4がどんな作業でどこまで自律的に動けるかという、次の評価軸を先取りした発言のようにも読めます。日付よりも、この物差しがどう製品に落ちてくるかのほうを、編集部としては注視しています。
まとめ
Google DeepMindのコレイ・カブクチュオール氏が2026年9月23日、次期フラッグシップ「Gemini 4」が開発の最終段階にあたる「ポストトレーニング」に入ったことを明らかにしました。「年内のできるだけ早く」の投入を目指す考えを示した一方、具体的な発売日や仕様、価格は示していません。
背景には、中位モデルGemini 3.5 Proが三度延期されたまま止まっていることと、同じ週にClaude Opus 5.5やGPT-6 Sol/Lunaが相次いで投入されたことがあります。指揮を引き継いで7週間あまりの同氏にとって、今回が初めての公の場での発言でした。
Gemini 4を待つべきかどうかを判断できる材料は、まだ「年内のできるだけ早く」という言葉しかありません。次に見るべきは、具体的な日付が入った発表です。
「AGIに到達したかどうかより、信頼できるかどうかを見ている」という語り口が、Gemini 4という製品にどんな形で表れてくるのか。年内の発表を、編集部も引き続き追っていく。