Google が2026年8月27日、動画生成・編集モデル「Gemini Omni 1.1 Flash」(モデルID:gemini-omni-1.1-flash)を開発者向けAPIの正式提供(GA)に切り替えた。目玉は3つある。直前10秒の映像を踏まえて動画を継ぎ足せるようになったこと、開始フレームと終了フレームを指定するだけでその間の動きを生成できるようになったこと、そして360pの下書きから4Kのアップスケール出力まで、用途に応じて解像度を選べるようになったことだ。

価格の面でも動きがあった。720p動画は1秒あたり約0.10ドルで、同じくGoogleの上位モデルVeo 3.1シリーズと比べると、高速版「Fast」とちょうど同額、標準版「Standard」の4分の1にあたる。

⚠ 情報の鮮度について
一次情報はGoogle公式ブログの発表(2026年8月27日16:00 UTC=日本時間8月28日1:00)です。本記事公開時点で発表から6〜8時間程度が経過しています。価格・仕様はいずれも同日時点でのGemini API公式ドキュメントの記載に基づいており、今後変更される可能性があります。

Gemini Omni 1.1 Flashとは──動画を「継ぎ足す」から「40秒の会話」に

Gemini Omni Flashは、テキスト・画像・音声・動画を入力にとり動画を生成する「動画版のGemini」として、2026年5月のGoogle I/Oで発表されたモデルだ。今回の1.1版は、6月30日から続いていたプレビュー提供を終え、有料ティアの開発者に正式公開された。プレビュー版のエンドポイント(gemini-omni-flash-preview)は9月30日に廃止される予定で、以後は新しいgemini-omni-1.1-flashへの一本化が進む。

変更点のうち最も実務に直結するのは、動画を継ぎ足すときに参照できる直前の映像の長さである。これまでは直前1秒分の映像しか見ずに続きを作っていたため、人物の位置や照明が数秒でずれることがあった。1.1版では直前10秒分を踏まえて生成するため、同じ画角・同じ人物のまま続きを作りやすくなっている。継ぎ足しは10秒刻みで繰り返せ、合計で最大40秒まで延長できる。

40秒 継ぎ足し後の動画の最大長
10秒 継ぎ足し時に参照する直前映像の長さ(旧版は1秒)
3秒 参照素材として読み込める動画の長さ

もう1つの新機能が開始フレームと終了フレームの指定だ。最初のカットと最後のカットの画像を渡すと、その間をつなぐ映像をモデルが生成する。カメラが部屋の中をアーク移動しながら被写体に寄っていく、といった演出も、この2枚の指定だけで作れるとGoogleは説明している。あわせて、最大3秒までの動画を「参照素材」として読み込ませ、登場人物や画風を保ったまま別の場面を作る機能も加わった。

解像度は360p・720p(既定)・1080p・4Kの4段階から選べる。ただし1080pと4Kは、720pで生成した映像をアップスケールして出す仕組みで、その解像度でゼロから生成しているわけではない。この点は次章の価格の話ともつながる。

一言でまとめると──「1秒しか覚えていなかった動画AIが、10秒覚えて40秒まで話を続けられるようになった」。継ぎ足しと補間という、動画編集ソフトの発想がAPIの標準機能になった改定です。

Gemini Omni 1.1 Flashの料金体系──Veoとの価格差はどれくらいか

Gemini Omni 1.1 Flashの課金は、他の多くのGeminiモデルと同じくトークン単位である。入力は100万トークンあたり1.50ドル(テキスト・画像・動画・音声とも共通)、出力は100万トークンあたりテキストが9.00ドル、動画が17.50ドルだ。動画の場合、720p出力1秒につき5,792トークンを消費する計算になっており、Google自身の説明によればこれは1秒あたり約0.10ドルに相当する

解像度を落とした360pの下書きモードでは、生成速度が720p比で最大60%速くなるうえ、料金も720pの3分の1程度に収まるとGoogleは説明している。プロンプトを何パターンも試してから本番の解像度で作り直す、という使い方を想定した価格設定だ。逆に1080p・4Kは前述のとおりアップスケール処理が挟まるため、720p生成に加えて追加のコストが発生する(Google公式ドキュメントは解像度別の秒単価までは公開していない)。

720p動画1秒あたりの生成コストをGeminiとVeoの4モデルで比較した横棒グラフ。Veo 3.1 Liteが0.05ドル、Gemini Omni 1.1 Flashが0.10ドル、Veo 3.1 Fastが0.10ドル、Veo 3.1 Standardが0.40ドルで、金額に比例したバーの長さで示している。

同じGoogleの動画生成モデルであるVeo 3.1と並べると、Gemini Omni 1.1 Flashの立ち位置がはっきりする。720p動画の秒単価は、廉価版のVeo 3.1 Liteが0.05ドル、Omni 1.1 Flashが0.10ドル、高速版のVeo 3.1 Fastも同じく0.10ドル、そして高品質な標準版のVeo 3.1 Standardが0.40ドルだ。Omni 1.1 FlashはVeo 3.1 Fastとちょうど同額で、Standardの4分の1にあたる。単純計算では、40秒の動画を720pで1本作ると、Omni 1.1 Flashならおよそ4ドル、Veo 3.1 Standardなら16ドルという開きになる。

モデル(720p・1秒あたり) 料金 Omni 1.1 Flashとの比較
Veo 3.1 Lite 0.05ドル Omni 1.1 Flashの半額
Gemini Omni 1.1 Flash 0.10ドル 基準
Veo 3.1 Fast 0.10ドル 同額
Veo 3.1 Standard 0.40ドル Omni 1.1 Flashの4倍
ⓘ Veoとどう使い分けるか
Veo 3.1は物理演算や画作りの精度を重視した「作品」向けのモデルで、Omni 1.1 Flashは会話的な指示で素早く直しながら作る「編集」向けのモデルという役割分担になっています。Googleのドキュメント上でも両モデルは別ラインとして並記されており、どちらか一方に統合される予定は示されていません。

なぜ今、動画生成AIは「編集の会話化」を急ぐのか

今回の改定でGoogleが繰り返し強調しているのは、単発の生成品質ではなく作り直しのしやすさだ。360pの下書きを安く速く量産し、方向性が決まってから4Kへ上げる、という2段構えの使い方を明示的に用意している。これは、動画生成AIの競争軸が「1本のクオリティ」から「何本試して当たりを引けるか」に移ってきていることの表れだと読める。

この方向性を裏づけるのが、発表と同時に紹介された導入企業の声だ。Adobeは画像・動画編集ソフトFireflyにOmni 1.1 Flashを組み込んだ。デザインツールFigma Weaveのクリエイティブディレクター、イタイ・シフ氏は「延長機能や参照素材の拡張、4K出力によって、Omni Flashは動画を生成するだけでなく、演出できる段階に来た」と述べている。動画編集サービスRunwayのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、ジェイミー・アンファーソン氏も「プロンプトや画像、動画から始めて、そこから生成・編集していくというRunwayの使い方に自然になじむ」とコメントした。

01
下書きと本番を分離できる

360pで何パターンも試し、方向性が決まってから4Kへ上げる。1本ごとに本番解像度で生成し直す従来のやり方より、試行錯誤の総コストを抑えられる。

02
既存ツールへの組み込みが進んでいる

Adobe FireflyやFigma Weave、Runwayといった制作ツール側への統合が発表と同時に進んでおり、単体アプリではなく制作フローの一部として使われる前提になっている。

03
Veoとの二枚看板で価格帯を分けている

高品質・高価格のVeo 3.1と、会話的で安価なOmni 1.1 Flash。Googleは1つのモデルに寄せず、用途で選ばせる構えを取っている。

あなたの動画制作はどう変わるか

Omni 1.1 Flashは開発者向けのAPIだけの話ではない。Google AI PlusまたはPro・Ultraを契約していれば、動画生成ツール「Google Flow」で本日から誰でも使え、動画の継ぎ足し機能自体はGeminiアプリでも使える。API連携の実装を待たなくても、契約さえしていれば試せる状態にある。

実務での使いどころは、解像度を分けて考えると整理しやすい。SNS向けの短尺動画やアイデア出しの段階では、安く速い360pの下書きを何本も作って比較し、方向性が固まってから1080pや4Kへ上げるという順番が理にかなっている。逆に、最初から仕上がりの精度が必要な広告用素材や、物理的な動きの正確さが問われるカットは、今回の改定でも据え置かれたVeo 3.1 Standardのほうが向いている。

💡 継ぎ足し機能を試すときのコツ
直前10秒を参照する仕組みなので、継ぎ足す前のカットに人物や背景の情報がはっきり写っているほど、続きの映像が安定します。逆に、直前のカットが暗い・ブレているといった場合は、継ぎ足し後に画角や色味がずれやすくなります。本番の解像度で作る前に、まず360pで1回通しの流れを確認しておくのが手早い進め方です。

編集部の見立て

Editor's Opinion

今回の改定でいちばん興味深いのは、Googleが動画生成の勝負を「画質」ではなく「編集のしやすさ」に置き直した点だと考えます。直前10秒を覚える、開始と終了のフレームをつなぐ、参照動画で人物を保つ。どれも派手な新機能というより、動画編集ソフトが昔から持っていた発想を、生成AIのAPIに移植し直した形です。

読者にとっての意味は、動画生成AIを「1回で完成品を出すもの」として使う段階が終わりつつある、ということです。Omni 1.1 Flashが前提にしているのは、安く何本も試してから絞り込むという、写真や文章づくりではすでに当たり前だった進め方です。この作り方に慣れているかどうかで、同じ料金でも得られる仕上がりの差が開いていくと見ています。

もう1点、AdobeやFigma、Runwayといった既存の制作ツール側が揃って統合を発表したことも見逃せません。単体の生成アプリとして使われるのではなく、普段の制作環境の中に部品として組み込まれる方向に進んでいます。動画生成AIを選ぶという行為自体が、モデル単体ではなく「どのツールの中で使えるか」で決まる場面が増えていくはずです。

価格については、Veo 3.1 Fastとの同額という設定を、単なる横並びとは見ていません。Googleが自社の別モデルとあえて同じ値札を付けたのは、性能ではなく用途で選ばせる意思表示だと読んでいます。この価格帯がいつまで維持されるかは、今後の値付けを見ないと判断できません。

まとめ

2026年8月27日、Googleが動画生成・編集モデル「Gemini Omni 1.1 Flash」を正式提供に切り替えました。継ぎ足し時に参照できる直前映像が1秒から10秒に伸び、10秒刻みで最大40秒まで延長可能に。開始・終了フレームを指定した補間や、最大3秒の参照動画を使った人物・画風の維持機能も加わりました。

価格は720p動画で1秒あたり約0.10ドル。同じくGoogleのVeo 3.1シリーズと比べると、高速版Fastとちょうど同額、標準版Standard(0.40ドル)の4分の1です。360pの下書きは720p比で最大60%速く、料金も約3分の1に抑えられており、量産してから絞り込む使い方が前提の価格設計になっています。

Adobe FireflyやFigma Weave、Runwayといった制作ツールへの統合もあわせて発表されました。API経由の開発者だけでなく、Google AI Plus・Pro・Ultraの契約者はGoogle FlowやGeminiアプリから本日利用できます。旧プレビュー版のエンドポイントは9月30日に廃止される予定です。

720p・1秒0.10ドルという値付けが、Veoの価格体系全体の中でどう位置づけられるかは、次のモデル更新でさらにはっきりしてくるはずだ。テキスト側ではGemini 3.7 Flashの値下げが8月に、画像側ではImagen 4からNano Banana 2への一本化が同じく8月にあり、Googleの生成AIラインナップは今、価格と役割分担を同時に組み替えている最中である。