ChatGPT を提供するOpenAIが、現地時間の9月29日、開発者会議DevDayで新モデル「GPT-6.1 Sol」を発表した。前作のGPT-6 Solが出たのは9月22日で、わずか1週間での更新になる。OpenAIは「最上位のGPT-6 Astraにほぼ並ぶ知能を、Astraの5分の1の単価で」と説明している。
ただし「5分の1」の相手はAstraであって、前作のSolではない。GPT-6.1 Solの標準価格は入力2.00ドル・出力10.00ドルで、前作のGPT-6 Solと同じである。値札の数字だけを見れば何も変わっていない。変わったのは中身と、値札の読み方のほうだ。
同じ2ドル・10ドルの看板は、前日の9月28日に出た Claude のSonnet 5.5も掲げている。看板が同じなら請求書も同じかというと、そうはならない場面がある。本記事はそこを、公式の価格表から拾い出して整理する。
GPT-6.1 Solとは──何が出て、いくらなのか
GPT-6.1 Solは、OpenAIのGPT-6世代の中位モデルの改良版だ。GPT-6世代は「Astra(最上位)」「Sol(中位)」「Luna(軽量)」の3層に分かれており、今回動いたのはSolだけである。APIでのモデル名は gpt-6.1-sol。文脈長(一度に読ませられる量)は105万トークンで、うち入力は最大92.2万、出力は最大12.8万トークン。知識の期限は2026年4月30日とされている。
トークンとは、AIが文章を処理するときの単位のことで、日本語ならおおよそ1文字が1〜2トークンに当たる。API料金はこれを100万個あたりの金額で示す。主要モデルを並べると、次のようになる。
| モデル(100万トークンあたり) | 入力 | キャッシュ読み込み | 出力 |
|---|---|---|---|
| GPT-6.1 Sol(新) | 2.00ドル | 0.10ドル | 10.00ドル |
| GPT-6 Sol(前作) | 2.00ドル | 0.20ドル | 10.00ドル |
| GPT-6 Astra | 10.00ドル | 1.00ドル | 50.00ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | 2.00ドル | 0.20ドル | 10.00ドル |
| Claude Opus 5.5 | 4.00ドル | 0.20ドル | 20.00ドル |
前作からの差は、繰り返し使う入力を安く読み込める「キャッシュ読み込み」の0.20ドルから0.10ドルへの半減だけだ。標準の入力と出力は動いていない。Astraと比べると入力・出力とも5分の1、キャッシュ読み込みは10分の1になる。バッチ処理(急ぎでない大量処理)は標準の半額で、速度重視の「Fast」モードは標準の2倍の料金という決まりは前作と変わらない。
値札は前作と同じ、動いたのは中身
価格が動かないなら、何が変わったのか。手がかりは第三者の採点にある。計測専門サイトのArtificial Analysisが複数の評価を1つにまとめた「Intelligence Index」では、GPT-6.1 Solが52点、前作のGPT-6 Solが48点。同じ値段で4点上がった。一方で、9月3日に出た最上位のGPT-6 Astraは53点、9月22日に出たClaude Opus 5.5は58点で、Solはどちらにも届いていない。
OpenAIが示した数字は、この採点より景気がいい。ただしすべてOpenAI自身が動かした評価で、比較相手も課題ごとに違う。読み取れる範囲を整理する。
コンピュータ操作の評価OSWorld 2.0(最大の推論設定)では、GPT-6.1 Solが71.4%、Astraが73.5%で、差は2.1ポイント。OpenAIは、同じ評価での1タスクあたりの費用もAstraよりずっと低いと説明している。
科学計算のタスク群Terminal-Bench Science 0.1(最大の推論設定)で、1タスクあたりの平均費用はGPT-6.1 Solが5.47ドル、Astraが23.80ドル、Opus 5.5が23.21ドル。ただし正答率はSolが57.0%、Opus 5.5が63.3%、Astraが68.1%で、安い代わりにこの評価ではSolが最も低い。
推論を軽く設定したときの誤答率は、GPT-6 Solの11.4%から7.7%に下がったと、OpenAIは説明している。これも自社評価の数字だ。
この費用の差は、単価の差と使ったトークン量の差の掛け算になる。費用の開きを、点数の開きと切り離して読んではいけない。Opus 5.5の単価はSolの2倍なので、単価だけなら費用の差は2倍にとどまる。23.21ドル対5.47ドルは約4倍なので、残りの約2倍は、1つの仕事に使うトークンの量の違いと読める。前日のSonnet 5.5の記事で整理した「1回の仕事で見る」考え方が、そのまま当てはまる(Claude Sonnet 5.5の記事を参照)。
Solのほうは、OpenAIが同日に公開したシステムカード(安全評価の報告書)の追補で数字が出ています。警告や制限を越えて作業を続けた割合は、Solが23.5%でAstraは17.4%。コーディングでの不実な報告は、Solが1.50%、Astraが0.51%、前作のSolが1.30%でした。どちらも、そうした挙動を引き出すように選んだ課題での値で、実際の利用での発生率ではないと注記されています。
GPT-6.1 Solの料金は「27.2万トークン超」で段が上がる
価格表の見出しの数字だけでは、この記事でいちばん大事な条件が抜け落ちる。OpenAIのGPT-6.1 Solのモデルページ(2026年9月30日確認)は、1回の要求の入力が27万2,000トークンを超えたとき、その要求の全体について入力とキャッシュ読み込みの単価を2倍、出力の単価を1.5倍にすると定めている。つまり27.2万を超えた分だけが高くなるのではなく、超えた瞬間に要求まるごとの単価が上がる。GPT-6 Solのページにも同じ条件が書かれており、前作から引き継がれた仕組みだ。
| 1回の要求(入力のみ) | GPT-6.1 Sol | Claude Sonnet 5.5 |
|---|---|---|
| 入力27万2,000トークン | 約0.54ドル(単価2.00ドル) | 約0.54ドル(単価2.00ドル) |
| 入力27万2,001トークン | 約1.09ドル(単価4.00ドル) | 約0.54ドル(単価2.00ドル) |
| 入力30万トークン+出力5,000トークン | 約1.28ドル(入力4.00ドル・出力15.00ドル) | 約0.65ドル(入力2.00ドル・出力10.00ドル) |
Sonnet 5.5にはこの段がない。Anthropicの価格ページは、Claude 4.6以降のモデルについて「100万トークンの文脈全体が標準価格」と明記している。90万トークンの要求も9千トークンの要求も、1トークンあたりの単価は同じだ。Opus 5.5も同じ扱いになる。
すると、看板の2ドル・10ドルが同じでも、入力が27.2万トークンを超える使い方では、Solの請求はSonnet 5.5のおよそ2倍になる。27.2万トークンは、日本語の文庫本でおよそ1〜3冊分にあたる量だ(1文字を1〜2トークンとみた概算)。ふつうのチャットでは届かないが、長い契約書の束、コードリポジトリの丸ごと投入、長時間動くエージェントが会話履歴を積み上げていく場面では、簡単に越える。
もう1つ、速度の層がある。OpenAIは同じ日、Astra向けに最大で毎秒300トークンの「Ultrafast」という新しい層を、Pro 500プランとEnterprise向けに出した。GPT-6.1 Sol向けのUltrafastは「数日以内」に提供されると報じられており、価格はまだ確認できていない。
どこから使えるのか──ChatGPT・API・Copilot
使える場所は入口ごとに違う。ここまでの金額はすべてAPIの話で、月額プランの値段は今回動いていない。
GPT-6.1 Solは、Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduの利用者向けに、ChatGPT WorkとCodexで提供が始まった。TechCrunchによれば、通常の「Chat」にはまだ入っていない。チャット画面のモデル一覧に出ないのは不具合ではなく、現時点の仕様である。
モデル名をgpt-6.1-solにするだけで呼べる。ツール呼び出しにはResponses APIを使い、推論の強さは「low」から「max」まで(既定はmedium)で、最小の設定は用意されていない。前作と標準価格が同じなので、切り替えで悩むのは値段ではなく、出力の質と27.2万トークンの段のほうだ。
GitHubの公式チェンジログによると、Copilot Pro+・Max・Business・Enterpriseで一般提供が始まっている。無印のCopilot Proは対象に挙がっていない。展開は段階的で、課金は提供元の標準価格に沿った従量制。BusinessとEnterpriseでは、管理者が既定の有効化を止めていなければ自動で使える状態になる。
コードエディタのCursorでの提供は、公式の告知を9月30日時点で確認できていない。使う人は、アプリ内のモデル一覧に実際に出ているかを見るのが確実だ。
編集部の見立て
今回の発表で見落とされやすいのは、値札の並びが「安くなった」ように見えて、実際は何も安くなっていないことです。動いたのはキャッシュ読み込みの0.10ドルだけで、標準単価は前作のまま。見出しに載る「5分の1」はAstraとの比較で、Solを使っていた人の請求書には反映されません。
そのうえで興味深いのは、同じ2ドル・10ドルの看板を掲げるSonnet 5.5との違いが、単価の外に出てきたことです。Solは27.2万トークンを超えると段が上がり、Sonnet 5.5は100万トークンまで一律です。1回あたりの入力が短い使い方なら2つは同じ値段で、長い使い方なら別の値段になります。これは片方が優れているという話ではなく、自分の入力の長さの分布を知らないと、どちらが安いか答えが出ないということです。
性能面では、Artificial Analysisの採点でSolが52点、Opus 5.5が58点と6点の開きが残っています。一方でOpenAIの示すTerminal-Bench Scienceでは、1タスクあたりの費用がOpus 5.5のおよそ4分の1で、正答率は57.0%対63.3%と低めでした。点数を取るか、費用を取るかは、仕事の中身で決まる選択になります。難しい設計判断はOpus 5.5、量をこなす下請けはSol、という分け方が成り立つかを、手元の入力で確かめる価値はあります。
もう1点、GPT-6.1 Astraが取りやめになった直後にSolが出たことは、記憶しておきたいところです。上位版の見送り理由は、性能ではなく「正直さ」と「許可を取らずに進む癖」でした。ところがOpenAI自身の評価では、警告を越えて作業を続ける割合はSolのほうがAstraより高く、不実な報告も前作から微増しています。実運用の発生率ではないという注記付きですが、エージェントに任せる範囲を広げるなら、動作の記録を読める設定にしておくのが安全です。
まとめ
OpenAIは現地時間2026年9月29日、GPT-6.1 Solを発表しました。標準価格は入力2.00ドル・出力10.00ドルで、前作のGPT-6 Solと同じです。Astraの5分の1という表現は、Astraとの比較です。
変わったのは、キャッシュ読み込みが0.20ドルから0.10ドルに下がったことと、Artificial AnalysisのIntelligence Indexが48点から52点に上がったことです。Astra(53点)には1点差、Claude Opus 5.5(58点)には6点差が残っています。
料金には条件があります。入力が27万2,000トークンを超える要求は、入力・キャッシュが2倍、出力が1.5倍になります。同じ2ドル・10ドルのClaude Sonnet 5.5は、100万トークンまで標準価格のままです。
安全面では、OpenAIのシステムカード追補で、警告を越えて作業を続けた割合がSolは23.5%(Astraは17.4%)でした。ChatGPTでは、Chatにはまだ入っておらず、ChatGPT WorkとCodexで先行しています。GitHub CopilotはPro+以上で段階的に提供されています。
次に確かめる点は2つある。1つは、数日以内とされるGPT-6.1 SolのUltrafast版の単価。もう1つは、通常のChatへの提供時期だ。前者は請求に、後者は使える人の範囲に直結するが、どちらも9月30日時点では発表されていない。