OpenAIが10月22日、判定だけを返す窓口「Decisions API」を公開ベータから一般提供へ切り替えた。公式のAPI更新履歴に一般提供の項として載り、1回のリクエストで扱える質問の数も200問から400問に増えた。
この窓口がふつうのAIと違うのは、返ってくるものが文章ではない点だ。「この問い合わせは返金の依頼か」と尋ねれば0から1の確率が返り、選択肢を渡せばその中から1つを選び、評価の段を渡せば点数が返る。ChatGPTのように文を書くのではなく、判定の値だけを出す。
値段の作りも変わっている。出力トークンは課金されない。払うのは入力だけで、100万トークンあたり0.10ドルだ。ただしこの0.10ドルは、同じ形の商品を先に出していた3社のどれよりも高い。
Decisions APIとは──文章ではなく確率を返す窓口
APIとは、自作のツールや社内システムからAIを呼び出すための接続口のことをいう。ふつうのAPIはこちらが文章を送り、AIが文章を書いて返す。Decisions APIはこの後半が無い。公式のガイドによれば、返る答えの型は3つに限られている。
「この文は規約違反にあたるか」のような条件を渡すと、成り立つ確率が0から1の数値で返る。文章の説明は付かない。
こちらが用意した選択肢の中から1つを選んで返す。選択肢ごとの確率と、確信の度合いも一緒に返る。
2段から10段の評価の段を渡すと、その段に対する点数が返る。段の重みで平均を取るため、段と段のあいだの値になることもある。
呼び出し先は POST /v1/decisions で、使えるモデルは公式ガイドが「現時点で対応している唯一のモデル」と書く gpt-6-luna だけだ。GPT-6 Lunaは9月に出たOpenAIの低価格モデルで、無料版ChatGPTの標準モデルにもなっている。
使い方には制約がある。質問が全部で共有する資料は input に入れ、質問そのものは別に並べる。前の答えを受けて次を判定するような使い方は、公式ガイドが「別のリクエストとして送る」ことを求めている。ファイル、音声、過去のやりとりの参照も対象外だ。判定を1つずつ積み上げる仕事ではなく、同じ材料に対して独立した判定をまとめてかける仕事のための窓口だと読むのが正確だろう。
Decisions APIの料金──出力は0ドル、入力は0.10ドル
公式のAPIガイドは、単価を2文で言い切っている。キャッシュに乗っていない入力は100万トークンあたり0.10ドル、そして出力トークンは課金されない。キャッシュに当たった入力は割引の単価になり、その率は価格表にあるgpt-6-lunaの数値を使う。同じモデルをふつうの窓口(Responses API)で呼んだ場合と並べると、違いは出力の行だけになる。
| 100万トークンあたり | Decisions API | 同じLunaをResponses APIで |
|---|---|---|
| 入力(キャッシュなし) | 0.10ドル | 0.10ドル |
| 入力(キャッシュに当たった分) | 0.01ドル | 0.01ドル |
| キャッシュへの書き込み | 0.125ドル(30分)/0.25ドル(12時間) | 0.125ドル(30分)/0.25ドル(12時間) |
| 出力 | 課金なし | 0.50ドル |
| 使えるモデル | gpt-6-luna のみ | Astra・Sol・Lunaなどから選べる |
ここで数字を見ておきたい。出力が課金されなくなったことの影響は、仕事の内容で大きく変わる。判定の答えは数値だけなので、出力は1件あたり数十トークンにしかならない。かりに1件の判定で入力800トークン・出力20トークンを使い、月に1万件流すとする。入力は合計800万トークンで0.80ドル、出力は20万トークンで0.10ドル。出力代が消えても、請求は0.90ドルから0.80ドルになるだけだ。
input に置いたまま、リクエストごとに質問を差し替える」使い方を勧めており、共有部分が1,024トークン以上で前回と同じならキャッシュ扱いになって0.01ドルの単価が当たります。出力の0ドルは目を引きますが、請求を動かすのは入力の畳み方のほうです。
ベータの時点では、キャッシュの仕組みそのものが用意されていなかった。公式のアナウンスは10月6日に「払うのは入力トークンだけ」と書き、キャッシュの読み書きと出力に課金は無いと説明していた。一般提供で加わったのは共有入力のキャッシュ割引で、同時に書き込み側には課金が発生する形になった。無料だった枠が有料の割引枠に置き換わった、と読むのが正しい。
先行3社との比較──最大手の値札がいちばん高い
文章を書かずに判定だけ返すAIは、この1か月で急に増えた区画である。先に商品を出していたのは3社で、単価はいずれも0.042ドル以下だ。
いちばん安いのはCloudflareのClef-flashで、公式のモデルページが入力0.038ドルと記載し、「Clefのモデルは出力トークンを課金しない」と明記している。TypeSafeのJevと、Microsoftが10月9日に出したMicrosoft-Decision-1は、どちらも0.042ドルで横並びだ。OpenAIの0.10ドルは、0.042ドルの約2.4倍、0.038ドルの約2.6倍にあたる。
この区画の先頭を切ったのはTypeSafeで、9月に出したJevは文章を一切書かないモデルとして注目された。経緯は TypeSafeのJev、入力100万トークン0.042ドルで出力は無料 と、同じ単価で追いかけた Microsoft-Decision-1が入力100万トークン0.042ドルで登場 にまとめている。1か月で4社がそろい、そのうち最後に来た最大手の値札がいちばん高い、という並びになった。
すでにOpenAIのAPIで組んでいるなら、別の会社と契約を増やさずに同じ鍵で呼べる。請求も1つにまとまる。単価の差より、増える管理の手間のほうが高くつく規模はある。
一般提供で、質問ごとの指示に画像を入れられるようになった。10月15日には音声のGPT-Liveとの直結も加わり、相手が話している最中に判定を走らせる使い方が公式に用意されている。
同じ資料に対する400問を1リクエストにまとめられる。公式の使用量の集計も、質問が何問あっても1リクエストとして数える作りになっている。
あなたの仕事のどこを移せるか
ここまでの金額はすべて開発者向けAPIの単価である。立場によって、変わる部分と変わらない部分がはっきり分かれる。
ChatGPTの月20ドルのPlusや、Claude・Geminiの月額プランは今回まったく動いていない。Decisions APIは画面から使う機能ではなく、自分でプログラムを書いて呼ぶ窓口である。
問い合わせの振り分け、投稿の規約チェック、優先度の採点のように、答えが「どれか」か「何点か」で済む処理を上位モデルに投げているなら、請求と待ち時間の両方が下がる見込みがある。文章の説明が要る工程は残す。
Jev・Microsoft-Decision-1・Clef-flashのいずれかで動いているなら、単価だけを理由に移る根拠は無い。移る理由になるのは画像の扱い、音声との直結、契約を増やしたくない事情のどれかだ。
価格の順位は、この区画ではまだ固まっていない。GPT-6 SolとLunaが出力価格を半額以下にした9月の改定のときと同じで、誰かが下げれば周りが追う形になっている。いま0.10ドルで並んでいる最大手の値札が、半年後も同じ数字とは限らない。
編集部の見立て
今回いちばん注目したのは、出力をゼロ円にしたことそのものではありません。AIの料金が長いあいだ「入力いくら・出力いくら」の2行で書かれてきたのに対し、片方の行が消えた商品が最大手の正式な棚に並んだ、という点です。文章を売る商売の外側に、判定を売る商売の値札が立ちました。
ただし、安くなったと読むのは早いと考えています。本文で計算したとおり、判定の出力は数十トークンしかないので、出力代が消えても請求はほとんど変わりません。実際に請求を動かすのは、同じ資料への質問を1回のリクエストに畳めることと、共有部分がキャッシュに乗ることのほうです。値札の形が変わった分だけ、どこで請求が決まるのかが入力の側に寄ったと言えます。
最大手の単価が最安でないことも、見ておく価値があります。Cloudflareの0.038ドル、JevとMicrosoftの0.042ドルに対して、OpenAIは0.10ドルを選びました。この区画で勝負しているのは単価ではなく、画像や音声との接続と、契約を1つに保てることです。選ぶ側からすると、安い3社と高い1社という並びは、むしろ比べやすい形になっています。
気になるのは、単価が公式の価格表ではなくAPIガイドの中にだけ書かれている点です。ベータで無料だったキャッシュの読み書きが、一般提供で課金のある割引枠に変わったことも、価格表の行が無ければ後から差分を追えません。長い入力の倍率と地域処理の加算に具体的な数値が示されていないのも、同じところに根があると思います。
まとめ
2026年10月22日、OpenAIが判定専用の窓口Decisions APIを公開ベータから一般提供へ切り替えました。1リクエストで扱える質問は200問から400問に増え、質問ごとの指示に画像を入れられるようになりました。使えるモデルはgpt-6-lunaだけです。
単価は入力100万トークンあたり0.10ドルで、出力トークンは課金されません。キャッシュに当たった入力は0.01ドルですが、書き込みには0.125ドル(30分)または0.25ドル(12時間)が掛かります。ベータではキャッシュの読み書きに課金がありませんでした。
この0.10ドルは、Cloudflare Clef-flashの0.038ドル、TypeSafe JevとMicrosoft-Decision-1の0.042ドルに対して約2.4倍から2.6倍にあたります。4つとも出力は課金されません。先行3社は文脈長の上限を数字で示していますが、Decisions APIの上限は公式ガイドに記載がありません。
ChatGPT・Claude・Geminiの月額プランの料金は、今回いっさい動いていません。変わったのは開発者向けAPIの料金の作りだけです。
次に見たいのは、公式の価格表にDecisions APIの行が立つかどうかだ。単価がガイドの本文にしか書かれていない状態では、長い入力の倍率も地域処理の加算も、読者が自分の使い方に当てはめて計算できない。4社がそろった区画で値札の比較が始まるのは、その行が立ってからになる。