OpenAI が10月26日(米国時間)、中位モデルの新版「GPT-6.1 Terra」を公開した。API価格は入力100万トークンあたり1.00ドル、出力5.00ドル。置き換えられる旧モデルGPT-5.6 Terraの2.00ドルと12.00ドルから下がった。トークンとは、AIが文章を処理するときの単位で、日本語なら1文字が1〜2トークン前後にあたる。
売りは「コンピュータ操作」である。画面に映っているものを読み取り、クリックや入力でアプリをまたいで作業を進める力のことだ。OpenAIは用途として、請求書を1枚ずつ読んで会計ソフトに打ち込む作業などを挙げている。
提供先は、仕事用の「ChatGPT Work」、コーディング用のCodex、そしてAPIの3つ。告知が対象に挙げた有料プランはPlus・Pro・Enterprise・Eduで、無料プランへの言及は見当たらない。
GPT-6.1 Terraとは──何がいくらになったのか
OpenAIのモデルは、上から順にAstra、Sol、Terra、Lunaの4段で並ぶ。Terraは真ん中の「日常業務向け」で、今回の6.1版がGPT-5.6 Terraの後継にあたる。API上のモデル名は gpt-6.1-terra だ。価格の動きは次のとおり。
| Terra(100万トークンあたり) | GPT-5.6 Terra | GPT-6.1 Terra | 下げ幅 |
|---|---|---|---|
| 入力 | 2.00ドル | 1.00ドル | −50% |
| キャッシュ済み入力 | 0.20ドル | 0.05ドル | −75% |
| 出力 | 12.00ドル | 5.00ドル | 約−58% |
OpenAIは「標準価格が50%下がった」と説明している。入力はちょうど半額だが、出力は12.00ドルから5.00ドルへ約58%の値下がりで、半額よりもう少し深い。キャッシュ済み入力とは、同じ前置きの文章を繰り返し送るときに、2回目以降に安くなる単価のことだ。
第三者の測定が示した3つの変化
AIの性能を独立に測る機関のArtificial Analysisが、同じ10月26日にTerraの測定結果を公表した。OpenAI自身の数字より先に、こちらを見ておきたい。
最大の推論エフォート(AIがどれだけ長く考えるかの設定)で、同機関の指数を1タスク解くのにかかる費用は、GPT-5.6 Terraの1.40ドルに対して0.40ドル。3.5倍の差で、単価の下げ幅(出力で約2.4倍)を上回る。差が単価より大きいのは、1タスクで使うトークンも減ったためと推測できる。※観測
同機関の総合指数は、最大の推論エフォートで旧Terraを6ポイント上回った。エフォートを下げた設定では、上がり幅は7〜13ポイントになる。エフォートが低い設定ほど、新旧の差が大きい。
知識の正確さを測るAA-Omniscienceで、答えを知らない問いに何かを答えてしまう割合は88%から38%に下がった。50ポイントの低下だ。正答率そのものは2ポイントしか上がっておらず、改善の中身は「知ったかぶりが減った」ことにある。
残る課題もある。38%という数字は、知らない問いのおよそ3回に1回強で、いまも何かを答えてしまうことを意味する。上位のSolとの差も残った。同機関の総合指数でTerraは最大エフォートのSolを4ポイント下回り、下位のGPT-6 Lunaを10ポイント上回る。コーディングエージェント向けの指数(v2.0)では、Terraが48、Solが54、Lunaが31だった。
OpenAI自身が示した数字は、どこまで読めるか
OpenAIは告知で、Terraが旧モデルより大幅に伸びたと説明している。以下はいずれもOpenAIの自社測定で、第三者の再現は確認できていない。
| OpenAIが示した項目 | GPT-5.6 Terra | GPT-6.1 Terra |
|---|---|---|
| 事実の誤り率(推論エフォート低) | 53.6% | 16.7% |
| Terminal-Bench 4.0(最大エフォート) | 21.5% | 50.3% |
| Agents' Last Exam(中エフォート) | 基準 | 15ポイント上、費用は約3分の1 |
Terminal-Bench 4.0はコマンドライン上のコーディング作業を解かせる試験で、50.3%は旧モデルの2倍以上にあたる。Agents' Last Examは、仕事でソフトを使う力を測る試験だ。ほかにOpenAIは、GPT-6 Astraと同じ水準の成績を、トークン単価で約10分の1の価格で出したと述べている。作業の完了も、AstraやSolの3倍以上の速さだという。
読み方には注意が要る。この「Astraと並ぶ」はOpenAIが選んだ試験の話で、第三者の指数では並んでいない。前章のとおり、Artificial Analysisの指数ではTerraはひとつ上のSolにも4ポイント届かない。OpenAI自身も、特に難しいコーディングや深い調査にはSolかAstraを勧めている。
AnthropicのClaude Opus 5.5との比較も出ている。OpenAIは最大エフォートでのタスク費用がOpus 5.5の約9分の1だと説明し、XDA Developersが図から読んだ数字では、ベンチマーク1回の費用が1.01ドル対8.82ドルだった。ただし同じ図で、Terraの成績はOpus 5.5に3.2ポイント届かないという。安さは本物でも、首位を取ったわけではない。※観測(図からの読み取り)
どの画面で、誰が使えるのか
提供先と、使う人ごとの変わり方を分けておく。
告知が挙げたPlus・Pro・Enterprise・Eduの利用者が、ChatGPT WorkとCodexで使える。リリースノートにはBusinessも載るとする報道もあり、情報源で分かれている。※観測 提供は段階的で、プランや地域、ワークスペースの設定で順番が変わる。OpenAIは、この2つでの使用枠が旧Terraより長持ちし、SolやAstraよりずっと長持ちすると述べている。通常のチャットの標準モデルは10月7日にGPT-6へ切り替わっていて、今回の告知はそこに触れていない。無料プランについても言及が無い。
モデル名を gpt-6.1-terra にすれば呼び出せる。入力と出力の単価が下がるうえ、第三者の測定では1タスクに使う費用も単価の下げ幅以上に減っているため、請求書は単価の下げ幅以上に軽くなる可能性がある。ただし切り替えたあと、出力の書き方や精度が変わる場面があるため、実際の業務データ20〜30件ほどで前後を並べて確かめたい。
GitHub Copilotは、11月16日にGPT-5.6 Terraを引退させると案内している。その記事で案内された後継はSolとLunaで、今回のTerra新版が加わるかどうかは確認できていない。
編集部の見立て
今回の改定でいちばん注目しているのは、半額という数字より、1タスクの費用の下がり方が単価の下がり方を上回っている点です。単価は出力で約2.4倍の差、1タスクの費用は3.5倍の差でした。値札より請求書のほうが大きく動いたことになります。AIを選ぶときに単価表だけを見ていると、この差を見落とします。
もうひとつは、真ん中の段が厚くなったことです。難しい仕事はSolやAstraに任せ、日々の画面操作や書類処理はTerraに回すという分担が、費用面でも成り立ちやすくなりました。OpenAI自身が、いちばん難しいコーディングにはSolかAstraを勧めているのも、この分担を前提にした言い方だと受け取っています。
一方で、Astraと並ぶという主張は、第三者の指数では確かめられていません。安くなったことと、上位モデルの代わりになることは別の話です。さらに、知らない問いに答えてしまう率は38%まで下がったとはいえ、まだ3回に1回強は残っています。数字や固有名詞を扱う仕事で、確認なしに任せる段階ではありません。
まとめ
2026年10月26日、OpenAIが中位モデルGPT-6.1 Terraを公開しました。API価格は入力1.00ドル・出力5.00ドルで、GPT-5.6 Terraの2.00ドル・12.00ドルから下がっています。キャッシュ済み入力は0.20ドルから0.05ドルになりました。
Artificial Analysisの測定では、最大エフォートの1タスク費用が1.40ドルから0.40ドルへ、総合指数は6ポイント上がり、知らない問いに答えてしまう率は88%から38%に下がりました。OpenAIが示すAstra並みの成績は自社測定で、Solとの差は第三者の指数でも残っています。
提供先はChatGPT Work、Codex、APIです。OpenAIの告知が挙げた有料プランはPlus・Pro・Enterprise・Eduで、無料プランへの言及はありません。
確かめたい点は一つだけ残る。Terraに長い入力で単価が上がる段があるかどうかだ。ひとつ上のSolは27万2,000トークンで段が上がるので、数十万トークンの資料を扱う人は、この境目の有無で乗り換えの損得が逆になりうる。