新聞USA TODAYを発行するUSA Today Co.が2026年10月8日(現地時間木曜)、ChatGPT を運営するOpenAIを相手取り、米ニューヨーク州南部地区連邦地裁に著作権侵害で提訴した。請求は2億5,000万ドル超。USA TODAYのほか、Detroit Free PressやThe Arizona Republicなど計19の媒体の記事が、許諾なしにChatGPTの学習と運用に使われたと主張している。

新聞社によるOpenAI提訴は、2023年12月のNew York Times、2026年9月の Seattle TimesとNewsday に続く。目新しさは件数よりも、訴状が示した数字と、証拠として並べた中身にある。ChatGPTを使う側にとって何が変わり、何が変わらないのかを整理する。

⚠ 情報の鮮度について
一次情報は、提訴を伝えた2026年10月8日のロイターの報道と、同日から翌日にかけて訴状の中身を詳しく伝えた各社の報道です。本記事公開時点で提訴から約4日が経過しており、速報ではなく、選ぶ側に何を意味するかを整理する解説として書いています。ここに出てくる数字と主張はすべて原告側の訴状によるもので、裁判所はまだ何も判断していません。OpenAIは、10月9日時点の報道ではコメントを出していません。

何が起きたか──USA Today Co.がOpenAIを提訴

訴訟名は「USA Today Co., Inc. 対 OpenAI Foundation」、事件番号は1:26-cv-08892。原告はUSA Today Co.と、同社が所有する新聞各紙である。訴状は、OpenAIが原告の記事を数十万件にわたって許諾なしに複製し、ChatGPTを動かすAIモデルの学習と運用に使ったと主張している。

加えて、ChatGPTが原告の記事を再現したり要約したりすることで、読者が元の新聞サイトへ行く理由を奪っている、という筋立ても盛り込まれている。損害賠償は2億5,000万ドル超を求め、陪審裁判を要求している。報道を突き合わせた範囲では、被告はOpenAI側の法人群で、Seattle Timesの訴訟と違ってMicrosoftは含まれていない。

項目内容
提訴日2026年10月8日(現地時間木曜)
法廷米ニューヨーク州南部地区連邦地裁(マンハッタン)
原告USA Today Co.と同社所有の新聞各紙(対象は19の媒体)
被告OpenAI Foundationなど、OpenAI側の法人群
請求損害賠償2億5,000万ドル超、侵害行為の差止め、陪審裁判
OpenAIの反応10月9日時点の報道では、コメントなし
19 訴状が対象とする媒体の数
2.5億ドル超 請求する損害賠償額
16万件超 WebTextに含まれると主張する記事の数
一言でまとめると──「新聞社とOpenAIの係争に、USA TODAYを発行する会社が加わった。請求は2億5,000万ドル超だが、いまは訴状の主張が出た段階で、ChatGPTの使い心地は今日も変わらない」。見るべきは請求額よりも、訴状が学習データの話と、利用者に返す要約の話を並べて示した点です。

訴状が挙げる数字──16万件超の記事と、1億2,200万トークン

訴状は、原告の記事がどの学習データに入っていたかを数字で示している。ここで出てくる2つの名前は、どちらもOpenAIの過去のモデルの学習に使われたデータの名称だ。

WebTextは、OpenAIが2019年のGPT-2の開発に使ったウェブ記事の集まりである。訴状によれば、このデータに原告の媒体の記事が16万件超入っていたという。C4は、2019年のウェブ巡回データ(Common Crawl)を英語中心に選別して作られたデータセットで、原告の媒体のドメインが占める分は1億2,200万トークン超と主張している。トークンとは、AIが文章を処理するときの単位で、英語ならおおよそ1語が1トークン前後にあたる。

金額の根拠も訴状に書かれている。米国の著作権法は、登録された著作物が故意に侵害された場合に、1件あたり最大15万ドルの法定損害賠償を認める。訴状はこれに加え、記事から著者名や出典表示といった著作権管理情報を取り除いた行為についても、1件あたり最大2万5,000ドルを求めている。これらは請求の根拠として挙げた上限であって、裁判所が認める金額の見通しではない。

01
学習データの主張

WebTextで16万件超、C4で1億2,200万トークン超。2019年前後に集められたデータの話で、いまのモデルを直接作ったデータの話ではない点は、争点になりうる。

02
出力の主張

訴状がGPT-5.6の出力例を別紙として付けたと、一部の報道が伝えている(※観測。報じているのは一部の媒体にとどまる)。記事のタイトルを指定すると中身を詳しく要約して返した、という主張だとされる。

03
社内発言の引用

訴状はOpenAIの幹部や元幹部、社員の社内でのやりとりを、意図的に報道コンテンツを狙った証拠として引いているとされる。内容の真偽や文脈は、今後の審理で争われる。

新聞社とOpenAIの訴訟、これまでとの違いは

流れを並べると、今回の位置づけが見える。

2023年12月

New York Timesが提訴 OpenAIとMicrosoftを相手に、ChatGPTの学習と出力が著作権を侵害するとして提訴した。新聞社による同種訴訟の出発点になった。

2026年9月1日

米司法省が意見書 OpenAIとMicrosoftに対するNYT訴訟で、AIの学習はフェアユースだとする立場を示した。詳しくは9月の記事にまとめてある。

2026年9月4日

Seattle TimesとNewsdayが提訴 OpenAIとMicrosoftの両社が被告になった。

2026年10月8日

USA Today Co.が提訴 19の媒体を対象に、損害賠償2億5,000万ドル超を請求した。

OpenAIはこれまで、公開されているウェブ上の素材でAIを学習させることはフェアユース(公正な利用として認められる範囲)にあたる、という立場を取ってきた。9月のSeattle Timesの提訴に対しても、公開データでの学習でありフェアユースに沿う、という趣旨のコメントが報じられている。今回の訴状への応答は、報道の時点ではまだ出ていない。

違いを3つに絞ると、次のとおりになる。1つ目は被告の範囲で、Seattle Timesの訴訟がOpenAIとMicrosoftの両方を訴えたのに対し、今回はOpenAI側だけだ。2つ目は請求の組み立てで、複製に加えて、著作権管理情報の除去も主張に入っている。3つ目は証拠の見せ方で、学習データの数字とChatGPTの出力例、社内発言を一つの訴状に並べている。

一部の報道は、学習済みモデルや学習データの破棄まで求めていると伝えているが、別の報道は訴状の請求としてそれに触れていない。どちらが正しいかは本記事では確認できていないので、※観測として扱う。

ChatGPTの利用者に影響はあるのか

結論から言えば、いまChatGPTを使っている人の画面は変わらない。裁判所は何も判断しておらず、提供を止める命令も出ていない。ただし、使い方によっては頭に置いておく点がある。

A
自分で読むために使う人:変わらない

質問して答えを読むだけの使い方なら、この訴訟が直接問うているのはOpenAI側の行為で、利用者ではない。被告に利用者は含まれていない。

B
ニュースの要約を配る人:出典を残す

訴状が問題にしているのは、要約が元記事の代わりに読まれてしまう点だ。ChatGPTに作らせた記事要約を社内報や自分のブログで配るなら、元記事へのリンクを必ず付け、要約の内容は元記事で確かめてから出す。

C
会社で契約している人:補償の範囲を読む

OpenAIは2023年11月、ChatGPT EnterpriseとAPIの利用者が著作権侵害の請求を受けた場合に、防御費用を負担する「Copyright Shield」を発表した。適用の範囲や除外条件は現行の契約書で確かめる必要がある。

ⓘ 「訴訟があるから使えない」とは限りません
訴えられていることと、利用者が責任を負うことは別の話です。この訴訟で争われているのは、OpenAIが記事を学習に使ったこと自体の適否で、利用者の責任を問うものではありません。一方で、利用者が出力をそのまま公開する場面は、出力を巡る別の請求を受けうる場所です。社外に出す文章は、出典の確認と契約の補償条件をセットで見ておくと安全です。

他社のAIを選んでも、同じ種類の係争は付いて回る

OpenAIを避けて別のAIへ移れば解決する、という話でもない。Claudeを開発するAnthropicは、書籍の著作権訴訟で15億ドルの和解に至っている。画像生成のMidjourneyも、ディズニーとワーナーから提訴されている。

どの会社のAIも、学習に使ったデータの扱いを巡る争いの外にはいない。乗り換えの理由を「訴えられているかどうか」に置いても、乗り換え先に別の係争が見つかる。選ぶ軸は、仕事で何をさせるか、出力をどこまで外に出すか、契約でどこまで補償されるかのほうに置いたほうがぶれない。

編集部の見立て

Editor's Opinion

今回の訴状でいちばん気になったのは、2億5,000万ドルという金額よりも、学習データの数字と、ChatGPTが返した要約の例を同じ訴状に並べたところです(出力例の詳細は一部報道によります)。学習したこと自体の適否と、利用者に返す答えが元記事の代わりになっているかは、本来は別の論点です。それを一本の筋でつなげたことで、OpenAI側は学習の正当性だけを説明しても済まなくなります。

もう一つは、Microsoftが被告に入っていないことです。9月のSeattle Timesの訴訟では両社が訴えられました。今回なぜOpenAIだけなのかは、報道からは分かりません。訴えの組み立ての違いなのか、別の事情があるのかは、今後の書面で見えてくるはずです。

読者の皆さんに申し上げたいのは、この種のニュースを、乗り換えの合図として読まないほうがよい、ということです。係争の有無でAIを選ぶと、結局どこも同じ状況だと分かります。むしろ、AIに作らせた文章を社外に出すかどうかで、確かめる手間を決めるのが現実的です。

一方で、請求が全面的に通るとは限りませんし、裁判所が学習そのものをフェアユースと判断する可能性も残っています。いまは結論を急がず、次の書面を待つ段階だと考えています。

まとめ

2026年10月8日、USA Today Co.が米ニューヨーク州南部地区連邦地裁にOpenAIを著作権侵害で提訴しました。USA TODAYなど19の媒体の記事が、許諾なしにChatGPTの学習と運用に使われたと主張し、損害賠償2億5,000万ドル超を請求しています。

訴状は、WebTextに16万件超、C4に1億2,200万トークン超の原告の記事が入っていたことを挙げています。一部の報道は、ChatGPTが記事のタイトルから中身を要約して返した例も添えられていたと伝えています。これらはすべて原告側の主張で、裁判所の判断はまだありません。OpenAIは10月9日時点の報道ではコメントを出していません。

ChatGPTを使う人の画面は変わりません。ニュースの要約を社外に配る人は出典リンクと元記事の確認を、会社で契約している人はCopyright Shieldなど補償の範囲を、それぞれ確かめておくと安心です。

OpenAIが最初の書面でフェアユースを維持するのか、それとも記事の使い方ごとに争い方を分けるのか。そして、この事件が同じ裁判所で進むNYTなどの訴訟とまとめて審理されるのか。次に動くのは、この2点だ。