Microsoft AIが10月27日(米国時間)、画像編集モデル「MAI Image 2.7」をプレビューとして公開した。第三者の評価サイトArtificial Analysisの画像編集ランキングでは、評価点1193。首位のChatGPT系モデル(1199)とは6点差である。
ただし、この6点は誤差の幅(±15)より小さい。「2位」という言い方は間違いではないが、首位との差が実力差なのか、投票のばらつきなのかは、この数字だけでは決められない。
しかも、いま触れるのは編集機能だけだ。文章から画像を作る機能は「近日」とされ、API公開も料金も、公式ページには書かれていない。
MAI Image 2.7とは──編集だけを先に出したプレビュー
MAI Image 2.7は、Microsoft AIが自社開発する画像モデル「MAI Image」シリーズの最新版だ。今回の特徴は、画像を新しく作る機能を後回しにして、既にある画像を直す「編集」だけを先に出したことにある。元の画像と指示文を渡すと、場面の雰囲気や光の当たり方を変えたり、画像内の文字を差し替えたり、古い写真を補修したりできる。
Microsoftの発表によれば、前の版であるMAI-Image-2.6に比べて、Artificial Analysisが測る10の用途と7種類の編集操作のすべてで改善したという。とくに差が大きいのは「場面と画風」の編集で、次点のモデルを24点(Elo)上回ったとしている。ここでのElo(イーロ)とは、人が2枚の結果を見比べて選んだ票から計算する強さの点数のことで、差が大きいほど選ばれやすい。
「2位」の中身──6点差と、重なる誤差の幅
Artificial Analysisの画像編集ランキング(AA-Image-Editing v2.1)の上位は、次の並びになっている。
| モデル | 評価点 | 95%信頼区間 | 表示順位 |
|---|---|---|---|
| GPT Image 2.5 Sunburst(max) | 1199 | 1188〜1210 | 1〜2位 |
| MAI Image 2.7 プレビュー | 1193 | 1178〜1208 | 1〜3位 |
| GPT Image 2.5 Flare(max) | 1182 | 1171〜1193 | 2〜3位 |
| MAI-Image-2.6 | 1151 | 1139〜1163 | 4〜7位 |
| Krea 3(Ultra) | 1151 | 1137〜1165 | 4〜7位 |
| Nano Banana 2.1 | 1151 | 1138〜1164 | 4〜7位 |
注目したいのは「表示順位」の列だ。ランキングはMAI Image 2.7を「1〜3位」と表示している。評価点の順に並べれば2番目だが、誤差の幅を考えると、1位から3位までのどれにもなりうるという意味である。上位3つの信頼区間は、1188〜1193の範囲で互いに重なっている。
前の版との比較なら、話は明快だ。MAI-Image-2.6の1151に対して2.7は1193で、42点の上積みになる。両者の信頼区間(1139〜1163と1178〜1208)は重ならない。「Microsoftの画像編集は前より良くなった」は、数字で支えられる。支えられないのは「OpenAIを抜いた」のほうだ。
同じ順位表で、Nano Banana 2.1(Google・Gemini系)は1151、Krea 3 Ultraも1151で、MAI-Image-2.6と同じ位置に並ぶ。Midjourneyはこの編集ランキングに載っていない。
Microsoftの自己申告と、第三者の数字を分けて読む
公式発表には、順位の主張が2つある。ひとつはArtificial Analysisの画像編集ランキングで「2位」。もうひとつは、投票型の評価サイトArenaの編集部門で「3位」、つまりMicrosoft AIが「研究所別で2位」になったという主張だ。
前者は上の表で裏が取れる。評価点順では確かに2番目で、首位のすぐ下という位置になる。後者のArenaの順位は、この記事ではMicrosoftの発表をそのまま引いたもので、Arena側の画面で確かめた数字ではない。※観測として読んでほしい。
また、公式ページは「MAI Image 2.7は、GPT Image 2.5 Flareより上」と見出しで述べているが、これは正しい。評価点は1193対1182で11点差がある。ただし、こちらも信頼区間は1171〜1193と1178〜1208で重なっている。見出しの言い切りほど、差ははっきりしていない。
まだ無いもの──生成・API・価格
発表ページを読んで気づくのは、書かれていないことの多さだ。
「近日」とされているだけで、日付は示されていない。いま使えるのは、元の画像と指示文を渡す編集の形式だけだ。
公式ページには、開発者向けの提供方法も価格も書かれていない。業務のツールに組み込めるのか、いくらかかるのかは、まったく分からない。
試せるのは、Microsoftの試用ページ「MAI Playground」、投票サイトのArena、そしてArtificial Analysisの3か所。いずれも評価や試用のための場で、日常の仕事道具に入ってはいない。
モデルの大きさや学習の中身も明らかにされていない。Microsoft AIの画像モデルは、前の版(2.6)が8月、その前の2.5が6月と、数か月おきに更新されてきた。今回の2.7はその流れの延長にあり、同社の音声モデルを扱ったMAI-Voice-2.1の記事と同じく、まず性能を見せて、値札は後から出す順番になっている。
画像AIを選ぶ人は、何を見直すか
いまの画像編集は、すでに選択肢が多い。9月に出たChatGPT Images 2.5は、画像に直接コメントを書き込んで直す機能を持つ。10月6日に一般提供が始まったNano Banana 2.1はGoogleの側の対抗馬で、10月1日には座標で位置を指定するFLUX 3 Imageも出ている。そこにMicrosoftが、編集の評価で首位集団に入る形で加わった。
首位との差は誤差の幅に収まっており、乗り換える理由にはならない。しかもMAI Image 2.7は、まだ日常の道具として使える場所が無い。
API公開と価格が出ていない以上、設計に組み込む材料が無い。今回の数字は「候補に加える」ための印として手元に置くのがよい。
編集部の見立て
今回の発表で面白いのは、順位そのものよりも、Microsoftが「編集だけ」を先に出してきた点だと考えます。生成と編集は別の腕前で、編集のほうが評価の物差しを当てやすく、勝ち負けが数字に出ます。新しいモデルを世に問うとき、勝てる土俵を先に選ぶのは理にかなった判断でしょう。
一方で、読者として気をつけたいのは「2位」という言葉の響きです。首位との差は6点、誤差の幅は15点です。順位表の上では2番目でも、実力の上で2番目と言い切れる根拠は、いまの数字にはありません。公式の見出しも、そこを少し強めに書いています。
前の版から42点上がったことは、数字がはっきり支えています。Microsoftの画像モデルは数か月おきに更新され、そのたびに順位を上げてきました。この勢いが続くなら、生成機能とAPIが揃ったときに、あらためて有力な候補として並ぶ可能性は十分にあります。ただ、それは「揃ったとき」の話で、いまではありません。
まとめ
2026年10月27日(米国時間)、Microsoft AIが画像編集モデルMAI Image 2.7をプレビューとして公開しました。Artificial Analysisの画像編集ランキングでは評価点1193で、表示順位は1〜3位です。
首位のGPT Image 2.5 Sunburst(1199)とは6点差ですが、誤差の幅は±15で、上位3者の信頼区間は互いに重なっています。前の版MAI-Image-2.6(1151)からは42点上がり、こちらは区間が重ならないため、改善は確かです。
いま触れるのはMAI Playground、Arena、Artificial Analysisの3か所だけです。文章から画像を作る機能は「近日」とされ、APIと料金は公式ページに書かれていません。Arenaの「3位」という順位はMicrosoftの自己申告で、※観測の扱いです。
ChatGPTやGeminiで画像を編集している人が、今回の発表だけで乗り換える理由はありません。
次に確かめるのは、MAI Image 2.7の文章から画像を作る機能が出たとき、Artificial Analysisの生成ランキングでどこに入るかです。編集で首位圏に入った腕前が生成でも通用するのか、そこに数字が付くまでは、今回の1193はまだ半分の成績表にすぎません。